タラゴナ鈴木大輔、1部昇格プレーオフへ。「ヒリヒリした感じを楽しむ」 (4ページ目)
「観客が2度沸いて。ピッチでも混乱していましたね。追いついたと喜んでいる選手がいたり、『盛り上がるな、1-0のままだ』という選手がいたり」
情報が錯綜し、感情が蠢(うごめ)いた瞬間を鈴木は淡々と振り返った。
そして会場のムードに流され、心ここにあらずとなった選手たちは、ツケを払うことになる。89分、右からのCKを合わされ、あっけなく失点。1-1と追いつかれ、自動昇格の望みは断ち切られた。アラベスの選手も、「1位と2位で終わるのでは、55万ユーロ(約7000万円)の賞金の差がある」と、死んではなかったのである。
「他の会場の結果は別にして、ゼロに抑えたかったですね」
鈴木は守備者としての悔しさを滲ませ、口元を歪めて言った。
「でも、“前向いて、次行こう”という感じで気持ちは切り替わっています。プレーオフは4チーム、どこが勝ってもおかしくない。ここからの試合は自分たち次第なんで。ヒリヒリした感じを楽しみますよ!」
そう語る鈴木の顔にすでに険しさはなかった。光と影が交錯する一瞬は、究極的な生の実感を与える。ミックスゾーンで記者たちは「Sufrimiento (苦痛)」と呻いていたが、苦しみの果てに得るのが愉悦なのかもしれない。
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