【イングランド】リバプールの逆襲が始まるこれだけの理由 (3ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki
  • photo by GettyImages

「これほどコンディションがいいことは、しばらくなかったと思う」と、ジェラードはユーロ2012の期間中に語った。「もう股関節もまったく問題はない。なんの心配もなくやれる」。だが悲しいかな、加齢という過程を逆転させられる人間はほとんどいない。

 それでもリバプールが、この先も若手選手を獲得する見込みはある。注目すべきなのは選手補強に関して、ひとりが独裁的ともいえる決定権を持つ体制から、「群衆の叡智」を生かす方向に転換したことだ。「群衆の叡智」とは、多くの人の多様な意見を持ち寄れば、ひとりの専門家が決断する場合より、最良の結論に達する可能性が高くなるという考え方だ。

 昨シーズンまで移籍に関する重要な決断は、ほとんどコモリがひとりで行なっていた。今シーズンは、新監督のロジャーズを中心とする会議で方針が決められている。ロジャーズはまだ39歳で、名選手だったわけでもない(そもそも選手経験がほとんどない)。そのためアンフィールドでの発言権は限られており、新たな独裁者になるだけの力もない。

 リバプールは「マネーボール」式のデータ重視のチーム運営を続けるだろう。今ではサポーターの期待も地に落ちて、リーグ優勝のチャンスがあるとは誰も思っていないから、ビッグネームの選手を取らなくてはならないというプレッシャーも減った。獲得すべきではなかった選手を獲得してしまうリスクも少なくなるはずだ。

 そうはいっても、ロジャーズがそこそこの決定権を握っていることは確かだ。すでに彼の選手補強には、気になる傾向が見えている。

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