ベガルタ仙台13年目の3・11 「これで燃えなかったらサッカー選手じゃない」想いを胸にJ1昇格へ (2ページ目)

  • 戸塚 啓●取材・文 text by Totsuka Kei

【試合の行方に決定的な影響を及ぼした交代】

 復興応援試合と銘打たれた水戸ホーリーホックとの一戦でも、仙台は「やりたいこと」に偏らない。相手がハイプレスをしかけてくるとの分析に基づいて、DFラインから躊躇なくロングボールを入れていく。4-4-2のシステムで最前線に立つブラジル人FWエロンは長身ではなく、彼と縦関係に立つ中島元彦も地上戦を得意とするタイプだが、水戸のハイプレスを回避しながら不用意なボールロストを避ける意味では、現実的な対応だったと言える。

 0-0のまま試合が推移していくなかで、森山監督が交代カードを切ったのは62分である。エロンと2列目右サイドのオナイウ情滋を下げ、菅原龍之助と郷家友太を投入する。相手のハイプレスの圧力がやや落ちてきたところで、スピードを生かした突破が持ち味のオナイウから、パスの出し手にもなれる郷家へスイッチした。これが、試合の行方に決定的な影響を及ぼした。

 76分だった。自陣右サイドで右CB小出悠太がパスカットし、センターサークル付近の郷家へつなぐ。トラップが浮いてしまったものの、背番号11は迷うことなく左前のスペースへパスを通す。左MFの相良竜之介が、DFラインの背後へ抜け出していた。

 背番号14を着ける21歳は、胸トラップで前へ押し出したボールを右足でフィニッシュする。GKの頭上を破るループシュートが、ゴールネットに吸い込まれた。

「友太くんのボールの質と、あとはファーストタッチで決まったかなと。いいところにうまく置けて、GKの位置も見ながらうまく打てた。ループシュートは自信があるので、うまく入ってよかったです」

 1-0でリードする終盤は、水戸が長身FWを前線に並べてクロスを送り込んできた。森山監督はシステムを5-4-1へ変更し、試合終了のホイッスルを歓喜の瞬間とした。CBのマテウス・モラエスと知念哲矢を同時に投入するのは、2節の長崎戦でも見せた逃げきりのパターンである。

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