ジュビロ磐田のJ1昇格を支えた絆 「チームのために、という選手が揃っていた」 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【J1挑戦に向けて】

 シーズン開幕前から、磐田はハンデを背負っていた。FIFAの補強禁止処分(コロンビア人FWと結んだ契約が規則違反とされた)で、選手を新たに獲得することができなかった。否応なく、現有戦力での戦いを強いられた。そのせいで、下馬評も低かった。

 だが彼らは"弱点"を利点にした。降格したメンバーと手に手をとって戦うことで、結束を強化。同じメンバーで戦うことで、お互いの良さ、悪さはわかっていたし、コンビネーションは上積みするだけでよかった。それが全員攻撃全員守備を可能にした。

「チームのために、組織のために、という選手が揃っていました」

 山田は言う。

「(一昨シーズンにJ1昇格し、昨シーズンにJ2降格した)主力が残ってほぼ3年になるので、絆は"すごい"あります。(補強禁止処分による)戦力は心配していなかったですね。(連敗がなかったのは)負けた後もブレずに、迷いなく戦うことができました」

 1-2とリードすると、磐田は危なげなくゲームを閉じていった。栃木の攻め手がハイボールでのパワープレーなど限られていたのはあるだろう。しかし緊張度の高い試合をミスなく勝ちきったのも、成長の証拠だ。

 シーズンを通した戦いで、日本代表選手やJ1得点王を擁する清水を上回っての昇格は価値がある。ただ、FC町田ゼルビアに大差をつけられたのは事実で、J1挑戦に向けては安穏とはしていられない。

「"J1に上がって戻る"というのを繰り返さない。そのために、J2での戦いをJ1につなげられるように......」

 横内監督は会見の最後に言った。2024年、磐田がJ1に戻ってくる。

プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。

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