横浜F・マリノスが首位ヴィッセル神戸に示した「王者の壁」 水沼宏太「負ける気はしなかった」 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Kyodo news

【交代カードに横浜FM の強み】

 戦術の一本化で強くなった神戸は、元日本代表選手たちが躍動した。強さの理由は歴然としており、彼らが調子を崩さない限り、上位を狙える。

 ただ、吉田孝行監督が話していた「王者の壁」を越えられなかった。

「前半30分は、うちの試合でした。その後も、何か悪かったわけではないですが、試合巧者というか、もっとアグレッシブに戦うべきでした。個人的には(前半31分に)イエローをもらってしまい、今日の審判だったら、相手を潰すともう一枚もらう、というのが怖くて、強気にいけなくなってしまって......」(神戸/齊藤)

 横浜FMは、徐々に神戸のライン間を襲撃できるようになった。

 33分、水沼がライン間に入って、左の永戸勝也からのパスを受ける。瞬間的に神戸のセンターバックが割れていた。そこに入ったアンデルソン・ロペスが足元にボールを呼び込み、左足のダイレクトシュートをあっさり流し込んだ。

 そして前半アディショナルタイムにも、センターバックの畠中槙之輔が敵陣まで攻め上がると、そのパスをゴールライン付近まで深みをとった水沼が受け、マイナスのクロス。これを渡辺皓太が右足のコントロールショットでネットを揺らした。

 横浜FMは右サイドの水沼を中心にプレーを動かしていた。人とボールの動きや流れが速く、流動的で、規則性もあった。たとえば、マルコス・ジュニオールがサイドに張り出せば、サイドの水沼は中へ入り、そこにサイドバックからボールが入る。人が湧き出すコンビネーションを作り出せていた。

 そして後半途中、横浜FMはケヴィン・マスカット監督が動いた。神戸が序盤から激しいプレスをかけていたことで体力を消耗していたのを見逃さなかった。西村拓真、ヤン・マテウスを投入。これだけのカードを使えるのが、王者の強みか。終盤、マテウスは左サイドでの攻防に勝ってボールを運び、クロスをアンデルソン・ロペスに合わせると、豪快なヘディングの逆転弾が決まった。

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