神戸は「バルセロナ化から遠い身の丈にあったプレー」鹿島は「シンプルに得意なこと」で好調 開幕3戦のJリーグ各クラブを福田正博が分析 (2ページ目)

  • text by Tsugane Ichiro
  • photo by Sano Miki

【得意なことをシンプルにやらせている鹿島】

 昨季川崎のリーグ3連覇の野望を阻んだ横浜F・マリノスは、昨季MVPの岩田智輝(現セルティック)が抜けたものの、センターラインにその影響はほぼ感じない。CBには、角田涼太朗がいて、昨季は調子が悪くてポジションを失った畠中槙之輔もコンディションを上げているし、柏レイソルから獲得した上島拓巳も控えている。

 むしろ現在小池龍太を欠く右サイドバックが、長いシーズンのなかでは問題になるかもしれない。また、優勝した昨季と戦い方は同じなだけに、相手に対策を練られたなかでどう上回れるかもポイントだろう。選手層の厚さはリーグ随一で、5人交代枠をフル活用できるチーム力を持つだけに、その課題をクリアできれば2連覇に近づくはずだ。

 オフシーズンに積極的な補強に動いた鹿島アントラーズは、第2節の川崎戦はちょっと不幸な敗戦になったものの、長いシーズンで見れば勝ち点を積み上げやすくなったと見ていい。もし川崎戦に勝利していたら、手のつけられないほどの勢いになっていたかもしれない。そう思えるほど、今季の鹿島は力強さがある。

 岩政大樹監督は昨季途中から監督になったが、今季はメンバーの特性を把握し、彼らの得意なことをシンプルにやらせているように映る。プレー面で言えば、DFラインからのビルドアップを最低限にし、一気にボールを前線に入れるケースが目立つし、これが好結果につながっている。

 鹿島のDF陣の長所は対人の強さにあったが、ビルドアップに関してはそこまで上手ではなかった。得意ではないことを選手たちに求めても、ミスが出るだけではなく、得意なプレーでも精彩を欠く。

 昨季までの鹿島はそんな負のスパイラルに陥っていたが、今季の岩政監督はいい意味で割りきって、DFラインからのビルドアップを必要最小限にとどめた。長いボールを前線に入れて、多少ルーズに蹴り出されたボールでも、鈴木優磨や知念慶といった強さと高さのある選手たちが競り合い、セカンドボールを拾うことで攻撃の起点にしている。

 もうひとつ鹿島で見逃せないのが、アンカーのポジションに入っている佐野海舟だ。町田ゼルビアから獲得した22歳だが、ボールを奪う能力、インターセプトの読み、奪ったあとに相手ペナルティーエリアまで持ち運べるドリブル能力も備えている。

 佐野はシーズン開幕から存在感を発揮しているが、ほかの選手たちも力はあるため、チーム内で自然と競争が高まっていくはずだ。長いシーズンを見据えれば、こうしてチーム力が高まっていくこともタイトル獲得には不可欠な要素になる。

2 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る