田嶋幸三が語るハリルホジッチ解任の真実「信頼関係に問題が生じている。目をつぶることはできなかった」 (2ページ目)

  • 戸塚 啓●取材・文 text by Totsuka Kei

【直接会って説明するのが会長としての責任】

 ホームのオーストラリア戦に勝利した日本は、ロシアワールドカップ出場を決めた。しかし、10月・11月のテストマッチは物足りない結果に終わり、12月のE-1選手権で韓国に1-4で大敗する。

 試合後、ハリルホジッチは「韓国のほうが日本を大きく上回っていた。フルメンバーのチームでも、この韓国に勝てたかどうかはわからない」と、国内組で編成されたチームを酷評した。こうした発言も、選手との溝を広げる要因となっていった。

田嶋幸三JFA前会長が2018年の電撃解任劇を語る photo by Sano Miki田嶋幸三JFA前会長が2018年の電撃解任劇を語る photo by Sano Mikiこの記事に関連する写真を見る「E-1選手権の次の活動は2018月3月のマリ戦とウクライナ戦で、この2試合はベルギーで行なわれました。日本代表の試合は可能なかぎり現地で観てきましたが、この2試合は東アジア連盟の仕事と重なってしまった。テレビで試合を観ることになったのですが、画面越しでも選手たちの心が監督から離れている印象を受けました」

 ベテラン、中堅、若手を問わずに「このままではワールドカップで勝つのは難しい」といった趣旨の発言が並んだ。チーム作りへの批判と受け止められることを覚悟で、選手たちは声を挙げた。悲痛な叫びだったと言ってもいい。

 次の活動は5月末である。ロシアワールドカップの開幕直前だ。「もう監督は代えられない」との意見が大多数だった。「ハリルホジッチは直前にチームを仕上げるのがうまい」との分析もあった。

 ここで、田嶋は前代未聞の決断を下す。

「ハリルホジッチさんを選んだのはお前じゃない、日本代表が負けてもお前のせいじゃないと言う人もいましたが、会長にはすべての責任があります。ハリルホジッチさんは選手とのコミュニケーションが不足していて、信頼関係に明らかな問題が生じている。それに対して目をつぶることはできなかった。

 彼のことを好きとか嫌いとかではなく、自分の立場がどうなるとかでもなく、日本サッカー界の未来のことだけを考えて代えなきゃいけない、ワールドカップで勝つ確率を1パーセントでも上げなきゃいけない、という気持ちでした」

 4月上旬に渡仏した田嶋は、ハリルホジッチに更迭を告げる。「直接会って説明するのが会長としての責任」と考えたからだった。

 ハリルジッチは「なぜだ!」と問い詰め、その後、来日して記者会見を開いた。名誉毀損による慰謝料1円と謝罪広告を求め、日本サッカー協会を提訴した(のちに取り下げられるが)。

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