日本代表招集メンバーからすけて見える森保監督の胸中 過去の成功体験にすがるしかないのか (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【森保ジャパンに最も欠けているのは?】

 アジアカップの日本はいい奪われ方、いい終わり方ができなかった。攻めながら守れなかった。つまり秩序なく能天気に攻めてしまったことが敗因だと見る筆者との間には、大きな見解の差が存在する。

 三笘と伊東。今回、欠くことになるこの左右のウイングが、他の候補とどこが違うかと言えば、縦突破を狙う比率の高さだ。縦ありき。左の先発候補である中村、右の先発候補である堂安、あるいは久保はその逆だ。縦ではなくまず内だ。おのずと奪われる場所に大きな差が生まれる。

 真ん中で奪われると、全体が逆モーションになり、カウンターを食いやすい。奪われるなら外。深い位置になればなるほど安全になるという理屈に、完全に合致したウインガーふたりが今回揃って欠場する。ロングボールの心配をする前に、奪われそうなポイントを心配したほうがいい。

 代役として選んだ相馬は、右も左もこなす。縦勝負の割合も、他の候補より高い。理に適っていることは確かである。だが、いかんせん新鮮味に欠ける。所属クラブでも活躍しているとは言い難い。長友ではないが、安定感を求め、ベスト16入りしたカタールW杯のメンバーにすがりついた印象だ。「次回W杯ではベスト8以上を狙う」(森保監督)との宣言に逆行した施策になる。

 唯一フレッシュな印象を与えるのは小川のみ。アジアカップでベスト8に沈めば、その再出発となるこの北朝鮮戦には、メンバーの刷新を迫られるのが普通だ。監督交代が行なわれないのなら、監督に思考法をそれなりに変えてもらわないとバランスは取れない。不成績を全肯定することになる。

 森保ジャパンに最も欠けるのはボールを収める力だ。1トップ、あるいは1トップ下にボールが入らないと攻撃のルートは両ウイングに限られる。それを解消しようと両ウイングが内へ入れば、悪い奪われ方に直結する。攻めながら守れないサッカーに陥る。

 チャンピオンズリーガーのひとりである鎌田大地は今回も招集外だ。森保監督は彼を見切ったのだと踏む。とすると、ポストプレーを得意にする選手はいなくなる。新戦力の小川に求められるのはそれだろう。ボールを収める力。上田、浅野、前田ら他の1トップ候補、あるいは1トップ下の候補である南野にはない魅力を発揮してもらわないと、攻撃の終わり方は改善されない。

 日本のウィークポイントはハッキリしているにもかかわらず、発表されたメンバーを眺める限り、改善される気配がしない。心配である。
 

プロフィール

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

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