「北朝鮮戦も危ない」サッカー日本代表はなぜロングボールに弱いのか? 福西崇史がその理由と対策を解説 (4ページ目)

  • 篠 幸彦●取材・文 text by Shino Yukihiko

【対策の部分は今後周囲から厳しい目で見られる】

 3月21日と26日に行なわれるW杯アジア2次予選の北朝鮮戦は、もともと相手がそういうサッカーをする国であるため、ロングボールを蹴られる展開も想定される。それに向けて状況を改善するためには、ロングボールの処理、競ったあとの整理だろう。

 まずは、相手に蹴らせるサイドを前線のプレスで制限すること。例えば右SBの菅原由勢や毎熊晟矢を攻撃的に上げたいのであれば、守備の強い左サイドの伊藤洋輝のほうへ相手の攻撃方向を制限するなど、チームで決めておくというのもひとつの手だ。

 相手がプレッシャーに来るので、CBはいい状態でのクリアが難しくなるかもしれない。そうなった時は中盤やSBの選手たちがどれだけいい距離感でサポートできるかが大切。競り合ったり、ボールを拾った選手の周りに3人くらいの選手が近くにいる状況を早めに作り、相手と相手の中間ポジションに入ってパスを受けられるようにする。

 日本はつないで主導権を握ろうとしているわけだから、CBがボールを持った時に選手が近くにいる状況を作ると、チームの共通意識として確認しておく。

 ただ、相手のプレスが早く、つなぐ判断が難しければ、リスクを回避するために全部大きくクリアでもいいだろう。それならば蹴った先に選手たちを置くようにすればいい。上田綺世は競り合いに強いわけだから、あらかじめ彼の周りに選手を置き、上田にロングボールを入れるのも選択肢だ。

 いずれにしてもアジアカップの日本は、状況によってチームとしてどうするかという整理が足りていなかった。北朝鮮戦まで日が浅く、代表チームでの活動時間は非常に少ないなかで、やれることは限られている。

 だが、アジアカップ後の最初の試合で、周囲からは必ずロングボールの対策がどうされているかを厳しい目で見られることになるだろう。僕自身も日本がどうするのか楽しみにしている。北朝鮮戦は日本代表が試練を乗り越える力強い試合を期待したい。

福西崇史 
ふくにし・たかし/1976年9月1日生まれ。愛媛県新居浜市出身。新居浜工業高校から95年にジュビロ磐田入り。ボランチのポジションで活躍し、多くのタイトルを獲得。チームの黄金期の主力としてプレーした。その後、FC東京、東京ヴェルディでプレーし、09年に現役引退。J1通算349試合出場、62得点。日本代表では02年日韓W杯、06年ドイツW杯に出場。国際Aマッチ64試合出場、7得点。現在は解説者として活躍中。

プロフィール

  • 篠 幸彦

    篠 幸彦 (しの・ゆきひこ)

    1984年、東京都生まれ。編集プロダクションを経て、実用系出版社に勤務。技術論や対談集、サッカービジネスといった多彩なスポーツ系の書籍編集を担当。2011年よりフリーランスとなり、サッカー専門誌、WEB媒体への寄稿や多数の単行本の構成を担当。著書には『長友佑都の折れないこころ』(ぱる出版)、『100問の"実戦ドリル"でサッカーiQが高まる』『高校サッカーは頭脳が9割』『弱小校のチカラを引き出す』(東邦出版)がある。

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