なでしこジャパンのライジングスター 藤野あおばが駆け上がる「エース」への階段 (3ページ目)

  • 早草紀子●取材・文 text&photo by Hayakusa Noriko

 なでしこジャパンは今、パリ五輪のアジア最終予選を目前に控えている。昨年10月の2次予選を突破し、残すは北朝鮮との一騎打ちのみである。

 女子サッカーは、オリンピックを一区切りとしてチームを強化していく。目の前の重要な戦いを勝ち抜いて、大舞台に挑むことは現チームの集大成とも言えるが、藤野の捉え方は少々異なる。

「ワールドカップは、やっぱりサッカーの祭典なので特別です。オリンピックは、日本全体がこのスポーツの祭典に沸く。比較するのは難しいですね......。(自分にとって、女子サッカーにとって)オリンピックって何だろう?」

 2011年のなでしこジャパン優勝によって、広く知られるようになった女子ワールドカップ。それ以降に競技生活を充実させていった世代にとっては、それが当然の感覚なのだろう。いや、いずれは女子サッカーのサイクルも、男子と同じくワールドカップを基準軸に据えるようになっていくのかもしれない。

 であれば、ここで必要以上にプレッシャーがかかることはないだろう。しかも、幸か不幸か、2次予選をケガで戦うことができなかった藤野は、今回初めてオリンピック予選というものに触れることになる。

「なでしこジャパンって不思議で、一緒にプレーすると『上手いな!』『楽しいな!』って思うんです。それで、2次予選をテレビで見ていた時、いつもテレビで見ていた顔ばかりなので、それはそれで違和感はないんですけど、(そこにいたのは)自分がいたチームではなくて......。自分もここに行きたいなって......」

 2次予選では結果はもちろんのこと、ワールドカップで戦った3バック(5バック)ではなく、再び4バックのシステムを試したり、実戦のなかで戦術の幅を広げていく作業も同時に行なっていた。また、格下相手の戦いだったため、新戦力たちも結果を残していったが、それを見た藤野に焦りはなかったのだろうか。

「ワールドカップには出させてもらいましたけど、もともとなでしこジャパンに自分の場所が確保されているわけじゃない。競争があってのメンバーだから、(他の選手と)比べてもしょうがないです。自分には自分のよさがあるから、もし自分が入ったら『こうしようか』という目線でしか見ていませんでした」

 そのイメージを持って臨んだ2次予選後のブラジル遠征では、先制点を挙げ、改めて積み重ねてきた力を自ら確認できた。同時に見えてきた次なる"壁"は、以前と同じようで、異なることに気づいた。

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