藤野あおば、20歳――WEリーグで増す存在感「得点はしたいし、取らなきゃいけない」 (3ページ目)

  • 早草紀子●取材・文 text&photo by Hayakusa Noriko

 3シーズン目を迎えたWEリーグは現在、第7節を終えてウインターブレイク中。ベレーザは3勝1敗3分の4位と苦戦している。他チームの底上げによって、星を分け合うゲームが増えてきているのが、その大きな要因だ。

 昨シーズンまでは、三菱重工浦和レッズレディース、INAC神戸レオネッサとともに、ベレーザを合わせて「3強」と言われていた。しかし、今シーズンのカップ戦を制したのはサンフレッチェ広島レジーナであり、皇后杯ではちふれASエルフェン埼玉が台頭し、準決勝では優勝した神戸相手に延長戦にまでもつれ込む死闘を演じた。リーグ全体の実力差は、見るからに縮まっている。

「以前なら3点取ったら勝っていたし、キレイに崩して畳みかけると、相手の戦意が喪失されることがあったけど、最近はそういう試合はないですよね。たぶん、4点取っても逆転可能なラインだと思えちゃう勢いが相手にあるような、そんな変化を感じます。

 2点、3点取っても安心できないし、これまで以上に(最後まで)何が起こるかわからない。スコアが上回っていても守備的な戦術に切り替えられず、攻め続けないとやられちゃうっていう苦しさがあります」

 あらゆることが冷静に見え、ゴールという結果に直結するポジションにいる分、自らの役割から決して目をそらさないのが、藤野あおばという選手だ。それゆえ、日々苦悩する。

「なんか、できないことが増えた気がするんです。できることが増えたから、新しくできないことが出てきたのか。もともとできたのに、できなくなっているのか......」

 おそらくそれは今シーズン、藤野がサイドから中央へとポジションを移動したことで生じている"壁"だろう。自らの全方向に敵を背負いながらのプレーに不慣れ、という面もある。

 しかし、ポジションが変わったからこそ、生まれたゴールもある。第6節の広島戦、右からのクロスをファーサイドで受けた藤野が流し込んだ先制弾はその最たるものだ。

「(サイドからの)クロスの展開で、相手の前に入ってボールを触る――前までの自分だったら絶対に入っていないポイントだったので、(あの形で点が取れたのは)個人的にはうれしかったです。これまで得意じゃなかったっていうか、やってこなかったから。まだまだですけど、今のポジションにおいてはゴールの確率が高い形なので、そのチャンスを増やしてモノにしていきたいです」

「どのチームもFWは大変ですよ」と藤野は笑うが、チーム戦術において、藤野に対する要求の度合いは格段に上がっており、対戦相手のマークも厳しくなっている。

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