日本代表をアジアカップ対戦国はどう見たか トルシエが指摘する「日本の弱点と長所」 (3ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

【「テレビで見ていた選手たちに勝てた」】

 2戦目で日本を破ったイラク。チームを率いるスペイン人監督ヘスス・カサスは自身のチームを絶賛していた。

「今日のイラクには、日本どころか世界チャンピオンのアルゼンチンさえ、勝てなかっただろう。私の選手たちはほぼ完璧だった。強く、その強さを自覚し、前に誰がいようと恐れなかった。日本が強いことを我々は知っていた。しかし最初の10分のイラクのプレーを見た時、今日は日本にとって苦しい日になると確信した。この日、あと200分試合を続けたとしても日本は勝つことができなかったろう」

 カタールには4万人近いイラクサポーターが押し寄せ、スタジアムの雰囲気は日本にとって完全にアウェーだった。

「イラクの選手たちは国のため、イラクの人々のために戦った。サッカーの試合に完璧なものはない。しかし今日の試合は、これまで私が見てきたいくつもの試合のなかで、最もそれに近かった。イラクはスピーディーで、力強く、アグレッシブであり、とにかく勝つことに執着していた。イラクがピッチを支配していることで日本の選手は苛立っており、我々はそれをうまく利用した。

 たぶん日本は、イラクがこれ程の高いモチベーションを持って向かってくるとは想像していなかっただろう。我々は日本がやろうとしているプレーをブロックすることを狙っていた。それを実行するのに最適な選手たちがそろっていた。そして私の願いどおりにプレーをしてくれた。少なくとも日本のスター選手たちと対等に戦ってくれた。これはイラクの歴史のなかでも最も重要な勝利のひとつだ」

イラクに敗れて失意の表情を見せる日本の選手たち photo by Kyodo newsイラクに敗れて失意の表情を見せる日本の選手たち photo by Kyodo newsこの記事に関連する写真を見る この日、イラクの2ゴールを決めたアイメン・フセインからも話を聞くことができた。

「私の人生のなかでも最も幸せな日だ。あのゴールは生涯、忘れられないだろう。世界に名を馳せる強い日本を相手に、いいプレーをし、こんなふうにはっきりとした形で勝てたのは、本当にすごいことだ。イラクがまぐれで勝ったなんて思う者は、たぶんひとりもいなかったはずだ。この日の日本は決してイラクより上ではなかった。南野(拓実)など、いつもテレビで見ていた強い選手たちと対等に戦うことができた。とにかくイラクは今日、その強さを見せることができた。2026年のW杯に出場するだけの力のあるチームであることを証明できたと思う」

3 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る