プロ野球「もったいない選手」15人 屈指の快足、ウエスタン本塁打王らのブレイクに期待 (4ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

 とはいえ、これほどの大砲が当てにいくスイングをしても面白味は何もない。強く、正確に振り抜く打撃へと進化させ、新時代の主砲に君臨したいところだ。

 一方の濱田は今季103試合に出場と出番を増やしたものの、打率.234、5本塁打と壁を突き破ることはできなかった。体格的に目を引くものはないが、ボールに対して強くコンタクトできるスイングは非凡。村上宗隆が2025年オフにはメジャーリーグ球団に移籍するとみられるだけに、濱田らの成長はチームの近未来を左右する。右の強打者では、他にも来季5年目を迎える井上広大(阪神)もそろそろ尻に火がつく頃だ。

 西川龍馬がオリックスにFA移籍する広島は、外野手のレギュラー争いが激化する。後釜の本命はパワーヒッターの末包昇大か、天才的な打撃センスを誇る若手の田村俊介だろう。だが、宇草孔基と中村奨成も「このままではあまりにもったいない」と思わせる能力の持ち主である。

 宇草は今季故障に苦しみ、一軍出場なしに終わった。2021年に43試合で6盗塁を記録した俊足が最大の武器に見られがちだが、ツボにはまると果てしなく飛ばすこの選手のスイングには夢がある。中村奨は攻守で本来持つエネルギッシュさを発揮できないまま、プロでの6年間を終えてしまった。それでも、グラウンド上で放射される華は得がたい個性だ。

 レギュラーが固まらない西武の外野陣も「もったいない選手」がひしめいている。リストには体調万全ならブレイク必至の若林楽人とバットさばきが魅力の西川愛也の名前を挙げたが、どの方向にもヒット性の打球を運べる鈴木将平もいる。

 最後にピックアップしたいのは、約3年前にも「もったいない選手」として挙げた廣岡大志(オリックス)だ。プロ8年間でヤクルト、巨人、オリックスと渡り歩いたのも、首脳陣に「廣岡なら......」と期待させるだけの素質があるからこそ。今季は日本シリーズ第2戦でスタメンに抜擢されると、4打数2安打1打点と活躍している。

 それでも、レギュラーとして活躍しない限りは「もったいない」と言い続けたい。廣岡大志のスイングに夢を見たひとりの人間として、来季こそ「もったいない選手」を卒業してくれることを祈るばかりだ。

プロフィール

  • 菊地高弘

    菊地高弘 (きくち・たかひろ)

    1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。

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