日本シリーズで巨人相手に衝撃の4タテ 「野球観を変えた」当時の西武の強さの理由を辻発彦が語る (2ページ目)

  • 水道博●文 text by Suido Hiroshi
  • photo by Sankei Visual

── このシリーズ、辻さんはトップバッターとして大活躍します。第1戦から4戦まですべて初回に出塁しました。

 初戦、槙原の立ち上がりを打ち崩して勝ったのは大きかったですね。私が一塁戦を破る二塁打を放ち、2番の平野謙さんが送って、3番・石毛宏典さんはセカンドライナー、4番・清原和博が四球で二死一、三塁。無得点に終わるかなと思いきや、オーレ(・デストラーデ)がカウント3ボール0ストライクからライトへ3ラン。このホームランが大きかったですね。

── 槙原選手の初球、143キロのストレートをバントの構えで揺さぶった。そして2球目、1球目と同じようなシュート回転した内角146キロの球をライトへ二塁打。中尾孝義捕手が外角に構えていたのに、"逆球"のような形で内角に入りました。それを辻さんは狙いすましたように、右方向に持っていきました。狙っていたのですか?

 いや、今でこそ話しますが、狙ったのではなく、あっちへいってしまったのです(笑)。差し込まれたんです。もともと私は二塁手の頭上や右中間方向に......というイメージで打席に臨んでいました。そういう打撃なので、インサイドからバットを出した時に差し込まれた分、角度がついて一塁線にいったと思うんです。だから、狙いすまして逆方向に持っていったわけではないんです。

【4戦連続の第1打席出塁】

── 4連勝の日本シリーズ。終わってみれば、第1戦の1回表がすべてだったといっても過言ではありませんでした。その3ランを誘発した、辻さんの安打はすごく貴重だったと思います。

 日本シリーズの初戦というのは、スタメンの実績があってもやはり誰でも緊張します。簡単に引っ張ってボテボテの打球でアウトになったら、トップバッターを任された意味もなくなってしまいます。いろんな球種を投げさせるとか、四球を選ぶとか、出塁することが一番の仕事ですから。そういう気持ちがとくに強かったので、引っ張りにはいきませんでした。

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