松井秀喜は「天敵」を攻略。元巨人スコアラーが明かす名選手たちへの助言と「投手の癖が一番出やすいポイント」 (3ページ目)

  • 白鳥純一●文 text by Shiratori Junichi

――三井さんの著書『もし、プロのスコアラーがあなたの野球チームにいたら何をやるか?』(KADOKAWA)では、横浜の絶対的な守護神だった佐々木主浩さんの癖についても書かれています。投手に関して、どのように癖を見つけるのでしょうか。

「いろいろなケースがありますね。上半身のアップ姿の映像と、持っている球種を照らし合わせている時にふと見つけることもありますし、『これは打てないなぁ』とか言いながら、毎日4、5時間くらいかけて分析していると気づくこともあります。

 昔は夏場になると半袖でマウンドに上がる投手が多かったこともあり、ボールを握った時の浮き出る腕の筋などに、違いを見つけることが多かったです。最近では1年を通してアンダーシャツを着る投手が多くなるなど、癖を隠すことが重視されるようになりました。

 もちろん他にも見る部分はあります。癖が一番出やすいポイントは、投球モーションで足を上げた時に、体とグローブが離れる瞬間です。球種によって、グローブの位置や手首の角度などに違いが出やすいんです。わずかな違いですが、私たちスコアラーはそこを注視します」

――過去に、癖を見抜いたことが攻略に繋がった投手は?

「印象に残っているのは、広島の大野(豊)さんです。大野さんが投じるシンカーに、巨人の打者は軒並み苦戦していました。でも、ストレートを投げる時は、足を上げるタイミングでグローブをグッと握るという癖を発見したんです。それでストレートだけを狙うように指示したら、苦戦していたのが嘘のようにガンガン打ち出しました。

 大野さんが引退されてNHKの解説者をしていた頃に、『俺、晩年は巨人にメチャメチャ打たれていたよな?』と聞かれたことがあって。癖がわかっていたことを伝えると、『お前ら汚いな(笑)』と。当時の広島はあまり細かい分析をしないチームでしたから、癖があったことに気づかなかったのかもしれません。外国人投手の(ロビンソン・)チェコや(ネイサン・)ミンチーなどの癖もわかっていたので、対策は立てやすかったです。しばらくすると、巨人戦には登板しなくなってしまいましたけどね」

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