史上初の開幕連勝スタート、目標は優勝から全国大会1勝へ 秀才軍団「京大野球部」に今何が起きているのか? (4ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

 関西大との開幕節では西宇だけでなく、1回戦で先発して6回無失点と好投した米倉涼太郎(3年/洛星)、勝負所で好リリーフを見せた宮島知希(3年/膳所)、中野翔貴(3年/守山)ら上級生が意地を見せた。そこへ2年生のサイド右腕・玉越が2戦連投して計4回2/3を無失点に抑えて、期待どおりの実力を発揮している。

 守備陣の貢献も見逃せない。京都大は大胆な守備シフトを敷いて、安打性の打球をアウトにするシーンも目立った。

 京都大では対戦相手を研究し、打者ごとの打球方向のデータを出してポジショニングに生かしている。ただデータを鵜呑みにするわけではなく、京大生らしい頭脳と感性も活用している。遊撃を守る細見は、こう明かす。

「相手バッターのスイング軌道を見たら、『ここしか飛ばない』とわかりますから。ベンチでどんなスイングをしているか情報を共有して、確信を持って守っています」

 今季の京都大はもともと野手陣にタレントが揃っていた。前出の細見だけでなく、昨秋にリーグ3位の打率.341でベストナインを受賞した外野手の中井壮樹(3年/長田)、強打の三塁手である谷口航太郎(3年/茨木)はリーグ内の有望選手と比べても遜色ない実力者だ。細見が「上で勝負したい」と語るように、3選手とも社会人でのプレー続行を希望している。

 4月13日からの同志社大戦では、1回戦は5対7で敗戦、2回戦は延長12回の末に1対1で引き分け、3回戦は1対2で敗戦と3試合ともクロスゲームの末に勝ち点を落とした。だが、京都大の力がフロックではないことを示すには、十分な内容だった。

 昨年まで、近田監督率いる京都大は「リーグ優勝」という目標を掲げていた。だが、今春から「全国大会1勝」に掲げ直している。

 残すは関西学院大、近畿大、立命館大との3節。秀才軍団は本気で頂点を狙っている。

プロフィール

  • 菊地高弘

    菊地高弘 (きくち・たかひろ)

    1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。

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