全日本大学選手権で存在感を示した好投手3人 ポテンシャルは一級品、ドラフトで上位指名も... (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

決勝戦で敗れはしたが、総合力の高さを見せつけた明治大・村田賢一決勝戦で敗れはしたが、総合力の高さを見せつけた明治大・村田賢一この記事に関連する写真を見る

村田賢一(明治大学4年/181センチ・90キロ/右投右打/春日部共栄高)

「あっちのほうに行ったほうがいいですよ」

 数人の記者に囲まれた村田賢一(明治大)は冗談めかしてそう告げた。視線の先にはこの日、ホームランを放って10人以上の記者に囲まれるドラフト上位候補の上田希由翔(きゅうと)の姿があった。

 村田はこの日、強敵・日本体育大学を相手に6回0封とエースらしい投球で勝利に導いていた。それでも、村田が報道陣に上田への取材を勧めたのは、自分が脚光を浴びにくい存在だと自覚しているからなのかもしれない。

 身長181センチ、体重90キロの厚みのある体は、いかにも馬力がありそうに見える。だが、村田のことをパワー型の投手と認識する大学野球ファンはひとりもいないだろう。

 スライダー、カットボール、カーブ、フォーク、ツーシーム、シンカーなど多彩な変化球をコントロールし、バットの芯を巧みに外す。ストレートは常時140キロ台前半に留まり、球威で抑え込むタイプではない。そのマウンド姿はまるで、社会人野球のベテラン投手のような貫禄を帯びている。

 村田は大学4年春までに東京六大学リーグで通算12勝1敗、防御率1.54と安定した成績を残した。3年春から続く連勝記録は10まで伸びている。

 それでも、ドラフト候補として見た時、村田は今年の大学生でもっとも評価が難しい投手かもしれない。4年生になってストレートにスピードが出てきたとはいえ、まだ目立つレベルではない。アマチュアレベルでは抑えられても、プロレベルになると球威不足から打ちごろの投手と化してしまう例は珍しくないのだ。

 今年は大学生投手に有力なドラフト候補が揃っている。そんななか、村田は自分自身をどのように評価するのか聞いてみた。

「みなさんボールが速くて、パワーで押せるピッチャーが多いと思います。自分はスピードを出したい気持ちはありますが、出るタイプではないので。ただ、コントロールや技に関しては絶対に負けない気持ちです。今のところ、それはうまくいってるのかなと思います」

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