「日本一の三塁コーチ」高代延博が阪神を変える

  • 高森勇旗(元横浜DeNAベイスターズ)●文 text by Takamori Yuki
  • 日刊スポーツ●写真 photo by Nikkan sports

 そして走塁だ。たとえば、高代氏が中日のコーチを務めていた2006年、チームはリーグトップの669得点を叩き出したが、本塁憤死はわずか「1」だった。その三塁コーチャーとしての的確な指示、判断は大きな武器になることは容易に想像できる。

 私が感じた高代氏の人柄、加えて高い技術の裏付けと、残してきた数字。どれをとっても、阪神が生まれ変わるには十分な材料ではないだろうか。

 まもなく始まる春季キャンプに向け、オフの間、高代氏は自宅近くでノックバットを振ることを日課としていた。そのバットの重さはずっと変わらない525グラム。メーカーに頼んで特注しているこだわりの道具だ。今では2、3グラムの違いも手に持っただけで分かる。そのバットで、これまで嵐のようなノックを選手に浴びせ続けてきた。その数、1日3000スイング。

「阪神の秋季キャンプでは迂闊にも手のマメが潰れてしまってな。今から振り込んどかんと春に間に合わへんから」

 遠くを見ていた高代氏の目に映るのは、阪神の明日だろう。そんな37年目の職人の目は、新人選手のように輝いていた。高代氏が持つ高い技術力、指導力でチームを9年ぶりの優勝に導くのか、今シーズンの阪神の戦いが楽しみでならない。

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