【新車のツボ79】レクサスIS-F"ダイナミックスポーツチューニング"試乗レポート (2ページ目)

  • 佐野弘宗+Sano Hiromune+●取材・文・写真 text&photo by

 こういう「硬いのに跳ねない、チョロつかない」あるいは「路面やクルマの状況をリアルタイムで直感させる」という味わいは、過剰性能車をアマチュアに気持ちよく運転させるには絶対不可欠なツボであり、これは活きた道で真面目に鍛えないと絶対に出せない。この点だけをもっても、IS-Fは本物だ。

 ただ、発売当初のIS-Fは「意あまって力足らず」の部分も多かった。とくに後輪グリップは雲をつかむようなバーチャル風味で、ワタシごときが、自信をもってアクセルを踏めるクルマではなかった。しかし、07年の発売からモデル最末期の昨年まで、IS-Fは毎年のように改良の手を入れて、磨いて磨いて磨きまくって、この"本物の味"に到達したのだ。

 こういう「クルマを育てる」という行為こそ、今までの日本メーカー......とくにトヨタには不足していた部分だった。IS-Fのツボは、クルマそのものの素晴らしいデキと味わいに加えて、そんな日本のクルマ史に残る壮大なストーリー(!)そのものである。

 なかでも今回の特別仕様車"ダイナミックスポーツチューニング"は、そのIS-Fストーリーの集大成。エンジン各部品を組み立ててからの1基ずつのバランス取り(!)や接着技術を使ったボディ強化対策(!!)、超高速でのダウンフォースをマジで追求した専用エアロパーツ(しかも見た目にはほぼノーマルのまま!!!)といいった、なんともシブくて超絶にマニアックな職人技を投入したモデル。ノーマル比で約250万円高という超高額商品だが、そこに使われた人件費や技術力、メーカーでならではのシブすぎる内容を考えれば、ツボを射抜かれたマニアは、それを不当に高いとは思わないだろう。

 残念なことに、IS-Fの新車を買うことはもうできないが、この最終進化型IS-Fは、おそらくマニア業界ではヴィンテージモデルとして今後もてはやされるだろう。すでに買っちゃっていた人は果報者である。

【スペック】
レクサスIS-F"ダイナミックスポーツチューニング"
全長×全幅×全高:4660×1815×1415mm
ホイールベース:2730mm
車両重量:1690kg
エンジン:V型8気筒DOHC・4968cc
最高出力:430ps/6600rpm
最大トルク:505Nm/5200rpm
変速機:8AT
JC08モード燃費:8.1km/L
乗車定員:4名
車両本体価格:1080万円

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