【新車のツボ50】スバル・フォレスター 試乗レポート (2ページ目)

  • 佐野弘宗+Sano Hiromune+●取材・文・写真 text&photo by

 新型フォレスターは、ハッキリいうと、かつての舗装路ゴリゴリ風味は完全に払拭された。フラット4ターボはギュイーンと回るのではなく、シュワーッと静か。乗り心地はスルスルスルーッと路面上をすべるがごとし。インプレッサSTIあたりに思いをはせる熱きスバリストには、この新型フォレスターは「お利口すぎるぜ!」だろう。

 だが、新型フォレスターはその静かさと乗り心地こそがスゴイ。同クラスSUVでももっとも静かで、もっとも乗り心地が快適である。そして、その静かさと乗り心地に、ビターッと正確なコントロール性が融合するところがまたスゴイ。そして、これらの新型フォレスターの美点はやっぱり、フラット4エンジンとそれに伴う低重心があればこそのスゴさだ。

 スバルのフラット4といえば高回転まで突き抜けるように回る鋭さを売りとしていたが、それはそもそもバランスよく低振動だから高回転まで回すことができたのだ。このフォレスターのように回転を控えめにすれば、フラット4はかわりに、4気筒では異例なほど静かで滑らかな高級エンジンになる。また、スバル自慢のゴリゴリの高速コーナリングは基本骨格から低重心だからこそ実現していたわけで、スピードをことさら追求しなければ、こういう背高ボディでも、そのぶん乗り心地よく、上屋がフラットに安定する。

 新型フォレスターは舗装路のスピードを追求しすぎない"寸止め"が絶妙である。フラット4や低重心といったスバル伝統の素性が、そのぶん静粛性や乗り心地、ゴリゴリではないが素直な操縦性......といった広く一般的な意味での"いいクルマのツボ"に集約されて、そこで効果を発揮しまくっている。さらに視界の良さに徹底してこだわるのもスバルの伝統だが、それもフォレスターのようなクルマでこそ活きる。新型フォレスターはガチガチのオタクをくすぐるトンがったツボはないが、とにかく運転しやすく快適なSUVだ。

 スバルをつくる富士重工は、もともとマジメすぎるほどマジメな企業風土をもつ。速いクルマをつくると決めたらとことん速いクルマをつくるし、SUVらしいSUVにすると決めたら、このようにSUVのツボを根こそぎ突く。フォレスターは4世代15年にして、もはや"奇をてらわない王道"というべき老舗SUVのオーラを醸し出している。

【スペック】
スバル・フォレスター2.0XTアイサイト
全長×全幅×全高:4595×1495×1695mm
ホイールベース:2640mm
車両重量:1590kg
エンジン:水平対向4 気筒DOHCターボ・1998cc
最高出力:280ps/5700rpm
最大トルク:350Nm/2000-5600rpm
変速機:CVT
JC08モード燃費:13.2km/L
乗車定員:5名
車両本体価格:293万6850円

著者プロフィール

  • 佐野弘宗

    佐野弘宗 (さの・ひろむね)

    1968年生まれ。新潟県出身。自動車評論家。上智大学を卒業後、㈱ネコ・パブリッシングに入社。『Car MAGAZINE』編集部を経て、フリーに。現在、『Car MAGAZINE』『モーターファン別冊』『ENGINE』『週刊プレイボーイ』『web CG』など、専門誌・一般紙・WEBを問わず幅広く活躍中。http://monkey-pro.com/

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