【新車のツボ29】三菱RVR 試乗レポート (2ページ目)
それ以上に感心するのが、もちろん、昭和クルマオタクオヤジであるワタシがいつもいうように、その走りである。RVRの乗り味はいい意味で重厚、かつ大人っぽく、ボディもシートもステアリングも、堅牢な剛性感がみなぎっている。何度もいうが、コンパクトカーより確実に格上だ。
でも、考えてみればそれも当然。RVRは土台となる骨格設計(=プラットフォーム)からして、同価格帯の国産クロスオーバーよりひとクラス......いや、考えようによっては2クラス上といえそうなものを使っている。
現在の三菱のラインナップは見事なまでの少数精鋭だ。しかも、その精鋭のなかには日産やスズキから供給されるモデルもあり、三菱が自前でつくる乗用車用プラットフォームは、軽自動車をのぞくと、大きくいって2種類しかない。そのひとつがコンパクトカーのコルト/コルトプラス用であり、残る三菱の自社製乗用車は、RVRも含めてすべて共通のプラットフォームなのだ。ちなみに、三菱主力のこの基本骨格を、あえてクルマオタクらしく社内コードネームで呼ぶと"GSプラットフォーム"である。
このGSプラットフォームから、三菱は中型SUVのアウトランダー、ミニバンのデリカD:5、そしてなんと(!)、あのマニア垂涎のランサーエボリューションX(=ランエボ)までつくっているのだ。GSプラットフォームは基礎設計段階から300ps級のランエボまで想定されており、いかにもハイパワー対応の高剛性はちょっと乗るだけで感じ取れる。ガッチリ正確な走りの手応えなどは、本格スポーツカー風味ですらある。
GSプラットフォームの三菱車で、サイズが最も小さく、エンジンパワーが最も低いのがRVRである。また、シートやステアリング、上級グレードに装備されるシフトパドルなど、RVRには高価な兄貴分モデルとの共通点が多い。RVR程度(失礼!)のサイズや性能、価格には、GSプラットフォームは正直なところ過剰品質といえるのだ。
RVRのようなクルマはかぎられたプラットフォームによる少数精鋭ラインナップで勝負する三菱ならでは......だが、RVRの担当者は今ごろ「RVRは安くしすぎたかも!?」なんて後悔していたりして。しかし、われわれ買う側にとっては、だからこそRVRは知る人ぞ知る"いい買い物"になったのだ。
【スペック】
三菱RVR G
全長×全幅×全高:4295×1770×1615mm
ホイールベース:2670mm
車両重量:1360kg
エンジン:直列4気筒SOHC、1798cc
最高出力:139ps/6000rpm
最大トルク:172Nm/4200rpm
変速機:CVT
10・15モード燃費:17.0km/L
乗車定員:5名
車両本体価格:224万円
著者プロフィール
佐野弘宗 (さの・ひろむね)
1968年生まれ。新潟県出身。自動車評論家。上智大学を卒業後、㈱ネコ・パブリッシングに入社。『Car MAGAZINE』編集部を経て、フリーに。現在、『Car MAGAZINE』『モーターファン別冊』『ENGINE』『週刊プレイボーイ』『web CG』など、専門誌・一般紙・WEBを問わず幅広く活躍中。http://monkey-pro.com/
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