上村彩子アナが大迫傑の新たな挑戦に迫る。日本男子マラソン強化への情熱 (2ページ目)

  • 山本雷太●写真 photo by Yamamoto Raita

 しかし、実際にチームの一員としてトレーニングに参加してみると特別なことは何ひとつなく、実力のある選手たちも日々、シンプルな練習をひたすら継続している。その光景にかえって衝撃を受けた大迫選手は「『粛々と、愚直に』やっていくしかない」とあらためて気付かされたそうです。

 お話をうかがって驚いたのは、大迫選手がまだバリバリの現役選手であるにも関わらず、後進の育成に力を注いでいることです。昨年、「Sugar Elite(シュガー・エリート)」というプロジェクトを自ら立ち上げ、大学や高校などのチームの垣根を越えて世界に通用する中・長距離走の日本人選手を育てる取り組みを続けています。

 大迫選手は、オレゴン・プロジェクトに参加するなかで、「自分ひとりでやることの限界を知った」とも話していました。だからこそ、「後輩たちには自分を踏み台にしてほしい」という思いが芽生えたといいます。自分の現状では世界一の選手に太刀打ちするのは難しいかもしれない。そのため、未来ある若い日本人選手に伝えられることを今から伝えていきたい。自分が現役を引退してからではなく、日本のトップランナーとして発信力や競技力のあるうちに活動を開始することを決意したのです。

 このプロジェクトの狙いのひとつに、大迫選手自身が経験したことを若い選手たちにはもっと早い段階で体験してほしいという思いがあります。日本国内で陸上をしていると、中学、高校、大学、実業団と、道ができていますが、大迫選手は「他の選択肢で選手の視野を広げ、チャレンジする大切さと楽しさを伝えていくこと」を考えていました。

 ちなみに「シュガー・エリート」のシュガー(Sugar)の意味やプロジェクト名の由来を聞くと、大迫選手の名前の傑の英字表記「Suguru」と似ているところからこの名前になったとのこと。海外選手にとっては「すぐる」の発音が難しく、アメリカにいたときはシュガーと呼ばれていたそうです。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る