ルカクのシュートパターンは多彩で豊富。日本選手でもマネできるポイントは? (2ページ目)

  • 松岡健三郎●取材・文 text by Matsuoka Kenzaburo
  • photo by Matsuoka Kenzaburo

◆6歳でプロになると決意。怒れるルカクはデカい選手の育成の好例だ>>

 足を振り上げて、シュートモーションでファーサイドを見せておいてGKの体勢を見て「股抜きシュート」をする。「アウトサイドシュート」で、GKがイメージしているタイミングを外すなど。さらには、GKがファーサイドを読んでいるところで「ニア上シュート」。ニアサイドの上は結構入りやすいと思います。

 駆け引きのなかで、どのシュートワザを選択するかが決まります。ルカクはその駆け引きがうまいので、ゴールを量産できているのだと思います。

 あとは、サイドからのクロスボールですね。ルカクは体が強いので、ゴール前で待ったスタンディングの状態でも相手と勝負できますが、スピードもあるのでニアサイドに飛び込んで行くプレーもします。

 日本人選手は、ゴール前中央での競り合いに対して絶対の自信を持つ人は少ないと思います。そこで動きの工夫を入れて、相手の前に入ってシュートするのがいいでしょう。 やはりFWは「ニアで勝負」できないといけません。ヘディングシュートでなくても、相手と駆け引きしてニアサイドに飛び込んでいけるかは、FWにとって重要な能力です。

 サイド攻撃が有効なのは、守る側が、サイドからのボールと、ゴール前にいる攻撃側選手を、同一視野に入れるのが難しいからです。だから、相手がボールウォッチャーになった時に走り込めばフリーになれるし、ニアサイドで相手の前に入ることができれば、ボールを少し触って軌道を変えるだけでゴールになります。

相手の前に入ってヘディングする「忍者ヘッド」相手の前に入ってヘディングする「忍者ヘッド」この記事に関連する写真を見る 今回紹介した「忍者ヘッド」のポイントは、まずニアサイドへ入る時に、なるべくゴールの幅の外へ出ないこと。ゴールポストより外へ行ってしまうと、そこからのシュートコースが狭まり、決めるのが難しくなってしまいます。

 ポストの内側であれば、ニアサイドに真っすぐシュートを打つパターンもあります。狙いとしてはポストの外に出ないように、クロスを蹴るほうも、合わせるほうも意識したほうがいいです。

 ヘディングシュートの時は、頭に軽く当てるだけでボールをファーサイドに流すのも大切です。強く当ててしまったり、頭を振ったり、体をひねったりすると、ファーサイドに流すのが難しいんです。右サイドから来たボールは、おでこの左側。左サイドからのボールならおでこの右側でヘディングする。ボールのコースを変えるだけのイメージでやるといいですね。

 このようにルカクは左足でも、右足でも決められて、ヘディングも強い。ニアサイドに飛び込んでいける駆け引きのうまさとスピードもある。シュートの選択肢が多いため、相手に対して優位に立っているからこそ、ゴールを決める確率が高いのだと思います。

ロメル・ルカク
Romelu Lukaku/1993年5月13日生まれ。ベルギー・アントウェルペン出身。地元のクラブで頭角を現し、アンデルレヒトの育成組織へ。16歳でトップデビューすると翌シーズンにベルギーリーグ得点王に輝く。2011年からプレミアリーグへ行き、チェルシー、WBA、エバートン、マンチェスター・ユナイテッドでプレー。19年からはインテル(イタリア)に活躍の場を移し、2020-21シーズンはリーグ優勝に貢献し、セリエAのMVPを獲得。ベルギー代表では黄金世代の一人として、すでに50得点以上決め、同国歴代最多得点記録保持者となっている。

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林 陵平
はやし・りょうへい/1986年9月8日生まれ。東京都八王子市出身。ジュニアからユースまで、東京ヴェルディの育成組織でプレーし、明治大学を経て2009年に東京ヴェルディ入り。レフティの大型FWとして活躍した。10年に柏レイソルに移籍し、11年にJ1優勝を経験。その後、モンテディオ山形、水戸ホーリーホック、再び東京Ⅴ、FC町田ゼルビア、ザスパクサツ群馬でプレーし、20年に現役を引退。Jリーグ通算300試合出場67得点。現役時代から海外サッカー通として知られ、メディア出演多数。21年から東京大学運動会ア式蹴球部の監督を務めている。

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