モドリッチがユニークなプレーを成功させる理由。ものすごい空間認知の中身 (2ページ目)

  • 松岡健三郎●取材・文 text by Matsuoka Kenzaburo
  • photo by Matsuoka Kenzaburo

◆モドリッチが大成したのはなぜか。超絶プレーを生み出す右足の秘密>>

 スローインを受ける技術と共に、投げる技術も追求してほしいと思います。

 モドリッチは、空間認知も優れているので、この「キックフェイントトラップ」のシーンでも、後ろにいる相手の動きや距離感がわかっているので、あのプレーの選択ができるわけです。

 相手が寄せて来なければ、インサイドキックでスローワーにボールをリターンしていたでしょう。勢いよく寄せて来たのを感じて、そのままボールを止めて逆を取ったわけです。相手との距離感、ボールスピードすべてを計算して瞬時に判断できるのはやはりすごいですね。

 ペナルティーエリア外にこぼれてきたボールを打つ「ドライブボレー」も、ボールがどこに落ちてきて、どこの高さでミートすればいいかは、空間認知がないとできないシュートです。

 この空間認知は、パスの精度にも関わってきます。状況に応じて、蹴るボールの高さだったり、スピードだったり、回転だったりを考えて蹴る。モドリッチはそれを自由自在に調整できます。自分がパスの受け手になっても、ダイレクトで次へパスなのか、一旦コントロールなのかを、瞬時に、正確に、判断できる。すべてが備わった選手ですね。

 今回は、モドリッチのプレーを10ワザやりました。同じMFだった僕が普段からやっていたプレーも多かったです。どれも試合ですぐに使えるプレーばかりでした。

 さすがに最後の「ドライブボレー」は難しかった(笑)。正面から来るボールを、ダイレクトで、蹴り足を真っすぐに振って蹴る技術は相当高いので、苦労しました。

 でも、どれも覚えておくべき足ワザばかりなので、すべてにチャレンジしてみてください。

ルカ・モドリッチ
Luka Modric/1985年9月9日生まれ。旧ユーゴスラビア(現クロアチア)のザダル郊外にある「モドリッチ」という名前の村で生まれる。18歳でディナモ・ザグレブのトップチームに昇格。ズリニスキ(ボスニア・ヘルツェゴビナ)、ザプレシッチへのレンタル移籍を経て、05年にディナモ・ザグレブへ戻りトップデビューし、リーグ3連覇に貢献。08年にトッテナム(イングランド)へ移籍しチームをけん引。12年からはレアル・マドリード(スペイン)でプレー。リーグやCLなどで多くのタイトルを獲得している。クロアチア代表では06、14、18年とW杯に3大会出場。18年ロシア大会では、クロアチアを初の準優勝に導き、大会MVPに。その年のFIFA最優秀選手賞を受賞し、クロアチア人初となるバロンドールにも選ばれた。


福西崇史
ふくにし・たかし/1976年9月1日生まれ。愛媛県新居浜市出身。新居浜工業高校から95年にジュビロ磐田入り。ボランチのポジションで活躍し、多くのタイトルを獲得。チームの黄金期の主力としてプレーした。その後、FC東京、東京ヴェルディでプレーし、09年に現役引退。J1通算349試合出場、62得点。日本代表では02年日韓W杯、06年ドイツW杯に出場。国際Aマッチ64試合出場、7得点。現在は解説者として活躍中。

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