日本競輪選手養成所の卒業記念レース間近 大学や高校日本一らが出場 ボート競技出身者がまさかの優勝候補筆頭 (2ページ目)

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  • 木鋪虎雄●撮影 photo by Kishiku Torao

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仲澤春香
ボート競技出身者がケイリンでも覚醒

 入所後、最初の記録会で女子候補生としては第120回生以来、3回生ぶりに最上位のゴールデンキャップを獲得した仲澤春香。「ゴールデンキャップを獲りたいとは思っていましたけど、まさか獲れるとは......」と本人も驚きを隠せなかったが、全種目で1位のタイムを出したその結果に、周囲は唖然とした。

 それもそのはず。仲澤は自転車競技を始めてわずか7カ月で入所試験を受けて合格し、入所時の競技歴はわずか1年ちょっと。そんな彼女がいきなり好結果を残したのだ。

 もともとスポーツ好きで、小学校低学年から野球をやり、中学はバスケットボールに励んだ仲澤。そして高校入学前に知り合いから「君なら日本一になれる競技があるぞ」と言われてボート競技を薦められた。

 その言葉を信じて高校からボート競技に打ち込むと一気に才能が開花。世界ボートジュニア8位、高校選抜1位と次々に好成績を収めた。年代別の代表にも選ばれ、「自分はボートでもっと上にいける」と感じていた。将来を期待される存在になっていたが、ひとつ上のU-23のカテゴリーを目指すタイミングで、その歯車が狂い始めた。

「U-19にも選ばれていたので、U-23にも当然選ばれるだろうと思って練習をしていたんですけど、少しずつ動きがおかしくなってしまって......」

 高校卒業後、実業団に入って練習したが、心身の不調で続けることに迷いが生まれ、やむなくボート競技から身を引くことを決断した。高校時代の顧問にそれを報告したところ、すぐにガールズケイリンを薦められ、県内の強豪高校の先生を紹介された。最初に話を聞いた時には「自分には向いていないな」と感じたが、とんとん拍子で話が進み、2週間後には練習場の近くに引っ越していた。
 
 前述のとおり、持ち前のフィジカルの強さを生かし、養成所で着実に成長を遂げた仲澤は、11月の国際大会「2023ジャパントラックカップ」への出場を許された。経験が浅いながらもケイリンで9位という成績は誇れるものだが、仲澤はそこで大きな衝撃を受ける。

「結構絶望しました。(佐藤水菜選手、太田りゆ選手など)ガールズケイリンをやりながら競技もやっている選手たちは、本当に同じ人間なのかなと思えるほど、大きな差を感じました」

 これを機に、仲澤は目覚めた。

「自分は初心者で先入観がなかったから、言われたことをただやっていただけで、いろんなことに疑問を持ってこなかったんですね。この大会の後は、より深く考えるようになりました」

 レースで勝つために自分は何をすべきなのか――。自問自答しながらの練習で仲澤の成長はさらに加速し、第3回記録会でもゴールデンキャップを獲得。第2回トーナメントでも優勝を飾った。

 第126回生のなかでは圧倒的なほどの力を見せる仲澤。目前に迫る卒業記念レースでは優勝候補筆頭と言えるが、唯一の不安は、あまり経験のない「333mのバンク」だという。彼女がそれをどう攻略してゴール線に最初に到達するのか、それを楽しみに待ちたい。

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