『仮面ライダーガッチャード』クロトー役・宮原華音が語る空手少女時代「男の子に勝てることが自信になった」 (4ページ目)

  • キンマサタカ●取材・文 text by Kin Masataka

 宮原はここで、しっかり演技と向き合った。「脇役の個性をしっかりと確立して、物語に厚みを出す」のが石田監督のスタイルだ。宮原が与えられたのは、ぶっきらぼうで男勝りの性格だが、優しい心の持ち主。物語ではほとんど語られることがないキャラクターの内面まで演じきるため、宮原はアクション以外でもその役に没入するように努力した。若き演者たちをはじめとした現場の雰囲気はよく、石田監督が「棺桶に入れて持っていきたい作品」と言いきるほどの素晴らしい作品に仕上がった。

 サブスクリプションでの配信のみだったが(のちにテレビ放送もされた)、作品は想像以上の反響を得た。そして「ジャパンアクションアワード」というアクション映画における最高の賞にもノミネートされる。作品も宮原自身も、優秀賞を獲得の栄誉に浴した。若手女優としては快挙だった。

 だが、宮原は「それがとても悔しかった」と下を向く。一部のアクションを自分で演じていない女優が、スタントマンとのコンビで最優秀賞を受賞したことに、どうにも納得がいかなかったからだ。

「『私は演技もアクションもひとりでやってるのに、なんで?』という気持ちでした」

 演技は女優で、アクションはスタントマン。それだったらアクション女優などいらないのではないか。自分の存在意義を見失いそうだったのだ。授賞式のあと、そんな宮原の心境を見透かした石田監督は彼女を呼び出し、盛大に喝を入れたという。実際には叱責に近いものだったようだ。

「厳しい口調で何時間も怒られました。監督が言いたかったのは、『お前は賞が獲りたくて役者をやっているのか』ということでした。『観る人を楽しませたくてやってるんだろう』と」

 そして気づく。アクションと演技で人を楽しませることは、自分にしかできないんだと。そうして宮原は、アクション女優としての本当の第一歩を踏み出した。

(後編:初めてのプロのリング 相手の膝蹴りに「このままだとやられる。行かなきゃ」>>)

【プロフィール】
宮原華音(みやはら・かのん)

1996年4月8日生まれ、東京都出身。三愛水着イメージガールに中学生として選出されデビュー。空手の全国大会で優勝した高い運動能力を生かし、映画『ハイキック・エンジェル』で主役を務めるなど、女優として活躍。立ち技打撃格闘興行『RISE』のラウンドガールを務め、選手としてもリングに立った。現在、『仮面ライダーアマゾンズ』以来の仮面ライダーシリーズ出演となった、『仮面ライダーガッチャード』に「冥黒の三姉妹」の次女・クロトーとして出演中。公式X>> 公式Instagram>>

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