投資を学ぶ高校野球部の生徒たちが「儲かるビジネスの作り方」をアイデア出し (3ページ目)

  • 鈴木雅光●構成 text by Suzuki Masamitsu

【ホリゾンタルとパーティカル】

奥野「あははは。大勢の人から広くあまねく少額資金を課金していくのを『ホリゾンタル』と言って、要は水平方向に展開させていくビジネスモデルのことを指すんだ。『Facebook』や『X』(旧Twitter)のようなSNSは、まさにその典型パターンだね。非常に大きなマーケットがあるから、そこに広告などを掲載して収益を上げることもできる。

 これに対してビジネス専門的に垂直方向に展開させていく『バーティカル』な戦略というのがあって、これで有名なのが『エムスリー』という会社で、医療用のSNSサービスを提供しているんだ。

 日本人の医師の9割に当たる30万人以上が『エムスリー』のプラットフォームを利用している。そして、このプラットフォームを通じて、製薬会社が新薬の情報を提供したり、あるいは病院がお医者さんのアルバイトの募集をかけたりしているんだよ。

『お医者さんがアルバイト?』って思うかもしれないけど、実は大学病院の勤務医などはそれほど高いお給料を得ていない場合も多いため、人手不足の病院やクリニックで、比較的高額のアルバイト料で働いていたりするんだ。そんな求人の情報が、『エムスリー』のプラットフォームを通じて提供されているんだ。

 さすがにホリゾンタルのプラットフォームビジネスはすでに大手がいて、そこに対抗するのは極めて難しいけど、バーティカルなプラットフォームで、かつお金持ちを相手にすれば、『エムスリー』のように勝機はあると思うよ。スポーツを教えるプラットフォームを構築するにしても、たとえばゴルフみたいに比較的所得階層の高い人が趣味にしているようなスポーツを選べば、勝てる可能性が出てくるかもしれないね」

奥野一成(おくの・かずしげ)
農林中金バリューインベストメンツ株式会社(NVIC) 常務取締役兼最高投資責任者(CIO)。京都大学法学部卒、ロンドンビジネススクール・ファイナンス学修士(Master in Finance)修了。1992年日本長期信用銀行入行。長銀証券、UBS証券を経て2003年に農林中央金庫入庫。2014年から現職。バフェットの投資哲学に通ずる「長期厳選投資」を実践する日本では稀有なパイオニア。その投資哲学で高い運用実績を上げ続け、機関投資家向けファンドの運用総額は3000億円超を誇る。更に多くの日本人を豊かにするために、機関投資家向けの巨大ファンドを「おおぶね」として個人にも開放している。著書に『教養としての投資』『先生、お金持ちになるにはどうしたらいいですか?』『投資家の思考法』など。『マンガでわかるお金を増やす思考法』が発売中。

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