今から「Amazon」をつくるのは難しい 高校野球部生が学ぶ新規ビジネスのあり方 (3ページ目)

  • 鈴木雅光●構成 text by Suzuki Masamitsu
  • はまのゆか●絵 illustration by Hamano Yuka

【プラットフォーマーの覇者になるには】

奥野「でも、プラットフォーマー型のビジネスにも弱点があるんだ。それは、参入障壁がとても低いことなんだよ。

 だって、野球を教えてもらいたいという人と、野球を教えたいという人をマッチングさせているだけなんだから、このビジネスモデルを運営する人自身には何の付加価値がなくても、ビジネスとして成立してしまう。野球のことなんか何も知らなくても、それこそ興味すらなかったとしても、そのマッチングビジネスに『儲かる匂い』がするなら、誰もがそこに参入してくるはずなんだ。

 ということは、仮に君たちが真っ先にこういったビジネスのアイデアを考えて、先駆者としてビジネスをスタートさせたとしても、必ず後を追い掛けてくる新規参入者が出てくる。そうなると、君たちは新規参入者と競争しなければならない。もし、似たようなサービスだったら、必然的に価格競争になって、儲けはどんどんなくなっていく。プラットフォーマーの覇者になるのは、本当に大変なことなんだ。

 たぶん君たちは今、『Apple』や『Google』、『Amazon』のような巨大プラットフォーマーをイメージして、『やっぱり儲かっているじゃん』って思っているだろうけど、じゃあ今から『Amazon』と同じようなビジネスを立ち上げて、ジェフ・ベゾスに勝てると思うかい?」

2人「思いません!」

奥野「でしょう。あそこまで巨大化してしまうと、競合他社はもう出てこない。でも、そこまでになるためには、とにかく他の人たちがアイデアを思いつく前に、どんどん先んじて手を打ち、新しいサービスを次々に立ち上げて、競合他社を圧倒しなければならない。プラットフォーマーは参入障壁が低いぶん、そこでビジネスを大きくするのは常人ではとても無理。なんて言ったら夢が壊れてしまうかもしれないけど、そのくらい、自分でビジネスを立ち上げ、それをスケールアップさせるのは難しいっていうことなんだよ」

奥野一成(おくの・かずしげ)
農林中金バリューインベストメンツ株式会社(NVIC) 常務取締役兼最高投資責任者(CIO)。京都大学法学部卒、ロンドンビジネススクール・ファイナンス学修士(Master in Finance)修了。1992年日本長期信用銀行入行。長銀証券、UBS証券を経て2003年に農林中央金庫入庫。2014年から現職。バフェットの投資哲学に通ずる「長期厳選投資」を実践する日本では稀有なパイオニア。その投資哲学で高い運用実績を上げ続け、機関投資家向けファンドの運用総額は3000億円超を誇る。更に多くの日本人を豊かにするために、機関投資家向けの巨大ファンドを「おおぶね」として個人にも開放している。著書に『教養としての投資』『先生、お金持ちになるにはどうしたらいいですか?』『投資家の思考法』など。『マンガでわかるお金を増やす思考法』が発売中。

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