「株を始めるチャンスですか」 投資を学ぶ高校野球部生が「バブル期以来の株高」に直面して (2ページ目)

  • 鈴木雅光●構成 text by Suzuki Masamitsu
  • はまのゆか●絵 illustration by Hamano Yuka

【バブルとは?】

奥野「株式投資についての格言に、こんなのがあるんだよ。『強気相場は悲観のなかで生まれ、懐疑のなかで育ち、楽観のなかで成熟し、陶酔のなかで消えていく』。

 ジョン・テンプルトンさんというアメリカの投資家が言ったことで、彼はファンドを設立して大勢の人たちのお金を運用していたんだ。日本がまだ高度経済成長期に入る前から、日本企業の株式に投資していたなんていう話もあって、投資に興味を持った人ならきっと、彼がこの世に残した投資格言のうちのひとつぐらいは耳にするだろうね。

 テンプルトンさんが残した格言は他にもたくさんあるんだけど、これを持ち出したのは、今の株式市場がこの4つの段階のどこに位置するのかを考えてもらうためなんだ。

 さっき、鈴木君も言っていたけど、壇上で女性が派手な服装で踊っていたのは、1991年から1994年にかけてのこと。株価は1989年12月をピークにして下がり続けていたんだけど、まだこの時期はバブルの残滓があって、日本は結構、元気だったんだ。そして、お立ち台の上で派手なカッコをした女性が踊っていたのは、まさに『陶酔』の最後の局面だったのかもしれない。ここから日本経済は急速に冷え込んでいく。そういう時代だったんだよ。

 だから、もし株式投資をしているのであれば、今はこの4つの局面のどこにあるのかということを、常に意識したほうがいいだろうね。

 たとえば日経新聞などで毎日のように『株価が高値を更新』という見出しが続いている時は、株価に対する見方は楽観的。そのうち『もう何でもいいから買うしかない』『今、株式を買わない人はバカだ』くらいの声があちこちから聞こえてくるようになると、これはまさに陶酔の局面に入っていて、やがて株価は下落に転じていく。

 現在の株式市場は、まだそこまでは行っていないだろうけどね。

 その続きを言うと、株価が底なしのようにどんどん下がると、もう悲観的な声しか聞こえてこなくなる。『買っても、もっと下がるかもしれない』という、恐怖に似た感覚に支配されて、誰も買わなくなってしまうんだ。総悲観状態だね。

 でも、面白いもので、こういう総悲観局面のなかに、強気相場の種が生まれてくるんだ。何だか理由はよくわからないけれども、株価が大きく下がらなくなり、ジリジリと値上がりする動きすら出てくる。こういう局面の時に株式を買うと、その後の上昇局面を大きく取れることもあるんだ」

鈴木「なんだか簡単そうですね、今がその4つの局面のどこなのかを見極めればいいだけなら」
由紀「これまでは悲観的な感じだったから、今こそ株式に投資するチャンスということですか」

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