「いつでも会社を辞められるように」 高校野球部生が早くも「転職の準備」を学ぶ (2ページ目)

  • 鈴木雅光●構成 text by Suzuki Masamitsu
  • はまのゆか●絵 illustration by Hamano Yuka

【「スキル=自分の付加価値」ではない】

奥野「まだ会社に入ってもいない君たちに、いきなりこんなことを言うのもなんだけど、いつでも辞められるオプションを持つようにしておくことは大切だと思う。会社から言われるままに働かなくてもよいという心の自由度と言ってもいいかもしれないね。この自由度というものはもしかしたら『お金』とか『仕事』そのものよりよっぽど重要かもしれないよ。

 いつでも辞められるオプションを持つには何をすればいいのか。それは自分の付加価値を高めることだと、先生は思っている。付加価値を高めるというと、すぐに資格取得と結びつけて考える人も多いんだけど、そうじゃない。もちろん、付加価値を高めるために取得しなければならない資格もあるけれども、それ以上に大事なのは、他者のために自分は何ができるのか、をしっかり確立するとともに、実際に『何をしてきたのか』ということなんだ。

『仕事の実績』という言葉に置き換えてもいいかもしれないね。それはたとえば、会社員としてこれこれこういう仕事で実績を残してきましたと、大勢の前でしっかり言えるようにすることなんだけど、ここで注意しなければならないのは、スキルを向上させればただちに自分の付加価値が高まると勘違いしてはいけないということなんだ。

 スキルとは、訓練によって習得される技能や技術のことで、ビジネスの世界で言うと、専門知識、ビジネスマナーや、コミュニケーション能力、相手のニーズを的確に読み取り、説得力のある話をするプレゼンテーション能力、問題や課題を発見してその解決方法を論理的に考えて実行する問題解決能力あたりが主なところかな。

 こうしたスキルを身につけることは、もちろん大事なことなんだけど、何の実績も出していなかったら、意味ないよね。社会人になった時、何よりも問われるのは、どのような実績を持っているのか、ということなんだ。

 そして、『私はこういうことを成し遂げてきました』と言えるようになるには、15年くらいの時間は必要かもしれないね」

鈴木「ということは、若いうちは転職なんてダメということですか?」
由紀「私、転職を重ねていろいろな仕事を経験したほうが、自分の成長にもつながるような気がするんですけど」

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