投資教育を学ぶ高校野球部生の素朴な疑問 「株式投資はプロにお任せ、はダメですか?」 (2ページ目)

  • 鈴木雅光●構成 text by Suzuki Masamitsu
  • はまのゆか●絵 illustration by Hamano Yuka

【投資信託の基本的な考え方】

奥野「実は先生も、資産形成のメインは投資信託を使っているんだ。株式投資も少しだけやっているけど、それは本当に趣味の範囲だね。

 これは僕の持論なんだけど、運用するお金が数千億円単位であるならば、自分で企業分析をして、投資先を探す意味はあると思うんだ。それ以前に、数億円以上の単位でお金を持っているのは、基本的に事業を成功させた起業家(=投資家)か、大きな相続を受けたかのどちらかでしょう。

 前者であれば、もうすでに自ら起業した企業に株式投資を行なって成功しているということなんだ。単純にサラリーマンをやっているだけでは、株式投資との接点も生まれないだろうし、それではいつまでたっても単純なサラリーマンから抜け出せないという「鶏が先か、卵が先か」というジレンマに陥ることになると思う。それを解決する糸口になるのが、少額から投資できる『投資信託』なんだ。

 大きな相続でもない限り、普通はそんなに投資の元手はないよね。それに、そもそも運用するお金が100万円しかないという場合、自分で企業分析をして、3800近くある上場株式からいくつかの企業を選んで投資する意味が、果たしてあるのだろうか。

 僕はないと思っているんだ。

 個人投資家が著者になっている投資本には、『〇万円を〇億円にしたカリスマ投資家が語る』なんてタイトルがついていたりするんだけど、これはなけなしのお金をはたいて買った企業の株価が、たまたま暴騰したというだけの話。こんなラッキーを引き当てられる人は、ほとんどいないだろうね。

 100万円で個別企業を選択する場合、数十社に分散投資するのは不可能なうえに、仮に2、3社を選ぶとしても、3800社近くある上場企業の業績や財務内容を分析して、『これだ!』と自信を持って持ち続けられる企業を選ぶには、ものすごい時間と労力を費やさなければならない。それ以上に企業選択する能力が必要。これ、ムダだと思わない?

 ムダというか、経済合理性のない話だよね。ましてや君たちが将来、社会人になった時、何を仕事にするのかはわからないけれども、おそらくとても忙しくなるはず。日常の業務をこなして、夜遅く家に帰り、食事を作り、掃除や洗濯をし、そのうえで株式投資をするための分析をするなんて、ほぼ無理だと思うんだ。

 それだったら、100万円持っている人が3000人集まって、30億円のファンドをつくり、そのファンドを投資のプロに運用させればいい。そうすれば、自分は企業選びをしなくても、ファンドの運用成績に応じて投資成果の分配を受けることができる。これが投資信託という投資商品の基本的な概念なんだ」

鈴木「自分で企業を選ばなくてもいいなんて、便利なものがあるんですね」
由紀「それはどこで買うことができるんですか?」

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