投資の鉄則「分散」について高校野球部生は「タイプの違う選手がいるのがいいチーム」と学んだ (4ページ目)

  • 鈴木雅光●構成 text by Suzuki Masamitsu
  • はまのゆか●絵 illustration by Hamano Yuka

 じゃあ、どのくらいの企業に分散すればいいのか、という由紀さんの質問に対する答えなんだけど、1000企業に分散するのも、1836企業に分散するのも、実は得られる分散投資効果はほとんど変わらないんだ。

 もちろん、まったく変わらないわけではないんだけど、分散投資による効果が薄れていくんだ。

 たとえば,投資する企業数を1から2に増やした時、非常に大きな分散投資効果が得られて、リスクが減る。2企業を3企業にすると、1企業を2企業にした時よりは効果が若干薄れるものの、それでも結構な分散投資効果が得られて、やはりリスクが減る。さらに10企業、15企業、20企業というように分散する先を増やしていくと、徐々に効果は薄れていくとはいえ、やはり分散投資効果は得られる。

 このように、分散させる企業数を増やすほど、分散効果は得られるんだけど、その効果は徐々に薄れていき、たとえば1000企業を1001企業に増やしても、効果がほとんど得られなくなるんだ。つまり、ある一定数を超えると、どれだけたくさんの企業に分散したとしても、ほとんど何も変わらなくなるというわけ。

 じゃあ、最も分散投資効果が得られる企業数は、ということになるんだけど、これは投資の教科書にも書かれていて、だいたい30銘柄なんだ。30社まで分散させられれば、分散投資効果の大部分を取ることができるというわけ。

 個人で株式に投資する場合、30社でも多いし、その分だけ投資金額も大きくなるから、これだけの企業に分散投資するのはなかなか難しいかもしれないけど、ひとつの目安として覚えておくといいかもしれないよ」

【profile】
奥野一成(おくの・かずしげ)
農林中金バリューインベストメンツ株式会社(NVIC) 常務取締役兼最高投資責任者(CIO)。京都大学法学部卒、ロンドンビジネススクール・ファイナンス学修士(Master in Finance)修了。1992年日本長期信用銀行入行。長銀証券、UBS証券を経て2003年に農林中央金庫入庫。2014年から現職。バフェットの投資哲学に通ずる「長期厳選投資」を実践する日本では稀有なパイオニア。その投資哲学で高い運用実績を上げ続け、機関投資家向けファンドの運用総額は4000億を突破。更に多くの日本人を豊かにするために、機関投資家向けの巨大ファンドを「おおぶね」として個人にも開放している。著書に『教養としての投資』『先生、お金持ちになるにはどうしたらいいですか?』『投資家の思考法』など。

4 / 4

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る