32歳・松田丈志「リオ五輪では、
うるさいオッサンの役目をやる」

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi  是枝右恭●撮影 photo by Koreeda Ukyo

 だからロンドンが終わったあと、リオまで続けるには、『同じように強度を上げていくのは無理だな』と思ったんです。違う方向性を見出すか、違うやり方でないと身体が持たないだろうなと。それで、理学療法士の方たちのお世話になり、身体をもっと機能的に使うようにしようと思いました。関節の可動域を広げたり、その動きのなかで止めるべきところは止まるように身体を変えていったのです。

 その結果、身体にかかる負担は減って、痛みなども出なくなったのですが、結果的にそれがバタフライにはよくなかったのかもしれない。身体が柔らかく動くようになったことで、泳いでいるとき、本来はフラットなポジションにならなければいけないところで身体がたわんでしまう。身体がより動くようになったがため、新たなエネルギーを使ってそのたわんでしまう動きを止めにいかなければいけなくなった、という部分が出てきました。それがおそらく、『自由形はいいけど、バタフライがよくない理由のひとつ』でもあったと思っています。

 ロンドン五輪後、松田は新たな道を選んだ時期もあった。2012年の秋から平井伯昌(のりまさ)コーチに師事し、東洋大学を拠点にして、入学してきたばかりの萩野公介などと一緒に練習を始めた。間近で見ていた平井コーチは、「松田はすごいよ。萩野とバンバン競り合って練習している」と笑顔で話していたことがある。だが、結果はなかなか出せなかった。

2 / 6

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る