女子走高跳で注目の髙橋渚が自己ベストを次々更新中 1m90台とパリ五輪への挑戦

  • 折山淑美⚫︎取材・文 text by Oriyama Toshimi

1m90の大台に近づいている髙橋渚 photo by AFLO1m90の大台に近づいている髙橋渚 photo by AFLO

 日本の女子走高跳に、再び世界へ向かう兆しが見え始めてきた。日本選手権2連覇中の髙橋渚(センコー)が今年に入り、記録面で好調な跳躍を続けており、5月3日の静岡国際では自己ベストとなる1m88をクリア。2013年を最後に国内では1m90を超える選手が不在、同時に世界との距離が遠いままになっていた状況が続くなか、その情勢に風穴を開ける勢いを見せている。

【1m90の大台は目の前に】

 日本の女子走高跳はかつて、1992年バルセロナ五輪では佐藤恵が7位入賞、2000年シドニー五輪は太田陽子(現姓・ハニカット)と今井美希が出場し、太田が決勝11位と世界を追いかけていた。現在も日本記録である今井の1m96(2001年樹立)を筆頭に、日本歴代で上位7人までが1m90以上をマークしている。だが、2013年に世界陸上選手権出場経験のある福本幸(甲南学園AC、旧姓・青山)が1m92と90を跳んで以来、日本ランキングリストからは「1m90」の数字は消え、各年の1位は1m80台前半という時代が続いてきた。

 しかし今シーズン、そんな低迷期から抜け出す機運を生み出しているのが髙橋渚(センコー)だ。昨年は1m85を2回クリア。1m84で日本選手権2連覇を果たした昨年は「1m88まではいけると思う」と口にしていた。

 今年に入ると2月4日の日本室内選手権で日本歴代8位タイの1m86を跳んで優勝すると、2月24日にはニュージーランドで1m87をクリアして2位に。そして5月3日の静岡国際では1m88を1回目に跳び、同記録で競り合ったエリン・ショウ(オーストラリア・自己ベスト1m90)を試技数差(少ないほうが上位)で上回って優勝した。

 もっとも1m73から跳び始めた静岡国際では、その後の高さも確実に1回目でクリアしていくが、余裕のある(跳躍時の体の位置が、バーからより離れている状態)ジャンプには見えなかった。

「昨日から調子がよくて体が動きすぎた分、助走の前半のリズムが速くなってしまうのが課題でした。助走の勢いだけで跳躍に入らないよう、(踏切時の)足の接地の感覚と腕のタイミングを意識しましたが、意識しすぎて、(助走から踏切の動きが)少しつながっていない感じが、低い高さ(の試技)からありました」と、髙橋は振り返る。

 だが、1m82、85は、それぞれ1回目でクリア。特に85の跳躍では「感覚的にはハマったという感じではないですけど、今日の(跳躍の)なかでは(一番)まとまった」とバーに触れながらも、成功させた。そして「自信を持っていけた」という自己新記録のかかった1m88も体がバーに触れながらも1回目でクリアした。

 髙橋は、自己ベストを更新したが、その受け止めは意外に冷静だった。

「本当はもっとパチンって跳べたらガッツポーズをしたかったけど、また(バーを)揺らして跳んだので......。ノータッチで綺麗にクリアできたら、思いきり喜ぶかなと思います」

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