箱根駅伝でも「幸運の1万ウォン」をお守りに 國學院大・平林清澄、衝撃の初マラソンの舞台裏 (3ページ目)

  • 和田悟志●取材・文・写真 text & photo by Wada Satoshi

【幸運の1万ウォンをお守りに】

 取材の途中、平林は大阪マラソンでのとっておきの裏話を披露してくれた。おもむろに財布から取り出したのは、韓国の1万ウォン紙幣だった。

「レースの前日にドラッグストアに行って、ドリンクやゼリーを買ってタッチ決済していたんです。そしたら、横のレジで韓国人の女性がタッチ決済に苦戦していて、何回やってもできていなかったんです。たぶん3000円くらいだったと思うんですけど、まあいいやと思って、横からピッてしてあげたんです」

 代わりに支払いを済ませドラッグストアを出ると、その女性が追いかけてきて、1万ウォンをくれたという。レートを調べると、自分が支払った3000円には満たない額だったが、「良いことをした分、明日は何か自分に良いことがあるだろう」と思うことにした。

 平林の身に起きた"良いこと"が優勝という結果だった。

平林清澄がお守りにしている1万ウォン平林清澄がお守りにしている1万ウォン「徳を積みました、僕(笑)。あの1万ウォンのおかげで、優勝できたようなものです。結果が悪かったら日本円に両替しようと思っていましたが、優勝したので、お守り代わりに財布に入れています。たぶんずっと持っていますよ。箱根で優勝したら、こんなことがあったって言いたいと思います」

 そのお守りの効果はいかに......それはさておいて、こんな平林の明るい性格がチームをひとつの目標へと向かわせるのだろう。来年の正月も最高の笑顔を箱根路で見せるつもりだ。

【Profile】平林清澄(ひらばやし・きよと)/2002年12月4日生まれ、福井県出身。武生第五中(福井)→美方高(福井)→國學院大。大学1年時から出雲駅伝、全日本大学駅伝、箱根駅伝の学生三大駅伝すベてに出場中。昨シーズンは全日本7区で自身初の区間賞を獲得、箱根では2年連続でエース区間の2区を任され区間3位の走りで8人抜きを果たし、チームの5年連続シード権獲得に貢献した。マラソン初挑戦となった今年2月の大阪マラソンでは、2時間06分18秒の初マラソン日本最高記録、日本人学生記録をマークして優勝を果たした。マラソン以外の主な自己ベストは1万m27分55秒15(2023年)、ハーフマラソン1時間01分50秒(2022年)。

プロフィール

  • 和田悟志

    和田悟志 (わだ・さとし)

    1980年生まれ、福島県出身。大学在学中から箱根駅伝のテレビ中継に選手情報というポジションで携わる。その後、出版社勤務を経てフリーランスに。陸上競技やDoスポーツとしてのランニングを中心に取材・執筆をしている。

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