福部真子の「七転び八起き」女子100mハードル競技人生「大失敗をパリ五輪につなげたい」 (4ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi

【真っさらな状態でパリ五輪に向かって】

 その結果が2023年の日本選手権4位だった。大会前までに世界選手権の参加標準記録を唯一突破していた福部は、3位以内に入れば内定するはずだったブダペスト世界選手権代表を逃した。福部は自分の気持ちを慮る周囲に対して気を遣ってカラ元気を出していたが、そこから立ち直るのには時間がかかった。

「何のための標準記録突破だったんだろうと考えてしまったんです。それにネットでは電光掲示板の誤表示が問題になり(※レース直後に1位と表示された)、『かわいそう』とも言われていて。でもパリに向けて必要な道だったというふうに切り替えないと、ここまでの歩みがすべて無駄になってしまう。大失敗したこともパリにつげないと、それこそ本当にかわいそうな人で終わる。『私は別にかわいそうじゃない』というようにしたいと思ったんです」

 ここでも、一回躓いたからこそ、何が必要かを考えられた。「12秒5に向けた取り組みの、何が間違っていたのか」を、今一度見直さないとそのレベルには到達できないと考え直した。

 今季の福部は2月3日からの日本選手権室内は直前に腰を傷めて欠場したが、2月15日にメルボルンで開催されたコンチネンタルツアー・ゴールドでシーズンイン。13秒28で7位になった。「2~3週間練習できていなかったわりには(13秒)28が出たので『アレッ?』みたいな感じで。腰を痛めたことでまた新しいことができました」と笑顔を見せる。

「昨年は、1本1本走るのがもう苦しくて、スタート地点に立つまでの気持ちが本当に苦しかったので、楽しくなかったんです。だから今年は頭をクリアにして、1本1本タイムだけと戦っていけたらいいのかなと。毎回レースを楽しみたいです」

 最終目標でもあるパリ五輪へ向けて、力強く宣言する。国内での初戦は、地元・広島での織田記念(4月29日)を予定している。

前編はこちら

【Profile】福部真子(ふくべ・まこ)/1995年10月生まれ、広島県出身。府中中(広島)→広島皆実高(広島)→日本体育大学→日本建設工業。中学3年時に全国中学校大会の四種競技で優勝、高校時代は100mハードルでインターハイ3連覇を達成するなど、世代のトップハードラーとして台頭。大学時代は最初の2年間は自己記録を更新できなかったが、3年目以降に徐々に記録を伸ばし始める。実業団ではシーズンごとに浮き沈みがあったが、5年目の2022年に日本選手権初優勝、初の世界選手権(オレゴン大会)出場を果たし準決勝では自身初の日本記録更新を果たし、同年9月には現在(2024年3月8日現在)も日本記録である12秒73まで記録を伸ばした。

プロフィール

  • 折山淑美

    折山淑美 (おりやま・としみ)

    スポーツジャーナリスト。1953年、長野県生まれ。1992年のバルセロナ大会から五輪取材を始め、夏季・冬季ともに多数の大会をリポートしている。フィギュアスケート取材は1994年リレハンメル五輪からスタートし、2010年代はシニアデビュー後の羽生結弦の歩みを丹念に追う。

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