渡辺康幸が振り返る箱根駅伝・第100回大会とこれから「総合優勝は10時間30分台、シード権争いは11時間を切る時代に」 (4ページ目)

  • 牧野 豊●取材・文 text by Makino Yutaka

【沿道の応援を見ていたら涙が出そうに】

――競技以外のことも含めて、思い出に残ることはありましたか。

「今回は100回記念大会であったこともそうですが、まず沿道の声援が解禁され、新型コロナ感染拡大前よりもすごいものでした。中継車に乗りながら沿道の応援を見ていたら、なんか涙が出そうになりましたね。特に最後の10区の人垣は何が起こったのかというくらいものすごかった」

――青学大が往路は5時間20分切り(5時間18分13秒)、総合で10時間41分25秒のそれぞれ大会新記録で、総合では10時間30分台が見える時代に入ってきました。

「現実的に10時間40分切りがなされると思います。ただ、これはライバルがいて、到達する領域だと思います。単独走で出るタイムではないです」

――10時間30分台を出すチームを作るには、どういうアプローチが必要になってくるのでしょうか。

「今の青学大の戦力で見ても十分に可能だと思います。さすがに往路で5時間18分台をさらに縮めるのは、なかなか難しいとは思いますけれども、今回の復路で詰められる部分はあります。ここが5時間20分台に乗っかってくれば(今回は5時間23分12秒)、到達します」

――今回の往路新記録と2大会前に青学大が出した復路記録(5時間21分36秒)を足すと10時間40分を切りますね(合計で10時間39分49秒)。

「チーム内の競争がとにかく激しいので、まずは16名に入るために高いレベルの走力が求められてきます。その中から10枠を勝ち取った選手が走るわけですから、さらに強さを増し、必然的に記録レベルも上がっていきます」

――話の延長で言えば、シード争いも11時間を切る時代が来る(今回の総合10位・大東文化大は11時間00分42秒)。

「来年にそうなる可能性も十分にあります」

【Profile】渡辺康幸(わたなべ・やすゆき)/1973年6月8日生まれ、千葉県出身。市立船橋高-早稲田大-エスビー食品。大学時代は箱根駅伝をはじめ学生三大駅伝、トラックのトップレベルのランナーとして活躍。大学4年時の1995年イェーテボリ世界選手権1万m出場、福岡ユニバーシアードでは1万mで優勝を果たし、実業団1年目の96年にはアトランタ五輪1万m代表に選ばれた。現役引退後、2004年に早大駅伝監督に就任すると、大迫傑が入学した10年度には史上3校目となる大学駅伝三冠を達成。15年4月からは住友電工陸上競技部監督を務める。学生駅伝のテレビ解説、箱根駅伝の中継車解説でもお馴染みで、幅広い人脈を生かした情報力、わかりやすく的確な表現力に定評がある。

プロフィール

  • 牧野 豊

    牧野 豊 (まきの・ゆたか)

    1970年、東京・神田生まれ。上智大卒業後、ベースボール・マガジン社に入社。複数の専門誌に携わった後、「Jr.バスケットボール・マガジン」「スイミング・マガジン」「陸上競技マガジン」等5誌の編集長を歴任。NFLスーパーボウル、NBAファイナル、アジア大会、各競技の世界選手権のほか、2012年ロンドン、21年東京と夏季五輪2大会を現地取材。229月に退社し、現在はフリーランスのスポーツ専門編集者&ライターとして活動中。

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