渡辺康幸が振り返る箱根駅伝・第100回大会とこれから「総合優勝は10時間30分台、シード権争いは11時間を切る時代に」 (3ページ目)

  • 牧野 豊●取材・文 text by Makino Yutaka

【すばらしかった城西大の躍進】

――ほかのチームや選手ではいかがでしょうか。

「なんと言っても城西大ですね。櫛部(静二)監督が今までの中でも、本当に一番いいチームを作り上げました。今年はもともと(上位を)狙っていたと思います。バランスも良かったし、全然留学生頼みのチームじゃなかった。青学大、駒大が強すぎましたけど、普通の年なら総合優勝してもおかしくない走りでした」

―― 10時間52分26秒で3位です。

「今回は絶対来るな、と思っていましたし、多分設定タイムより少し良かったか、本当に狙った通りのタイムくらいだったのではないでしょうか」

――早大時代には総合優勝も共に経験したチームメイト、櫛部監督は渡辺さんの2年先輩ですが、終わった後に話されたりしましたか。

「笑っていましたよ(笑)。してやったり、という良い意味での表情でした」

――大会前に櫛部監督にインタビューさせていただいた時は、前回大会の前から100回大会を意識した取り組みを行なっていたとのことでした。

「5区の"山の妖精"、山本唯翔選手(4年)だけでなく、2区の斎藤将也選手(2年)も大きかった。1区の野村颯斗、4区の山中秀真(共に4年)、3区のビクター・キムタイ(2年)と往路の選手は皆、役割を果たしました。ケガ人などもいたようで復路は多少苦戦気味で総合優勝するには難しかったですけど、狙いどおり、堂々の3位だったと思います」

――シード権前後のチームではいかがですか。

「来季以降のチームとしては、指導者が高校教員として全国高校駅伝優勝の経験を活かしている2チーム、シード権を獲得した真名子圭監督の大東文化大(総合10位)、4年ぶりの本戦で前半区間で見せ場をつくった新雅弘監督の日本大(総合15位)はこれから強くなる要素を感じさせます」

――少し言いにくいかもしれませんが、期待をかけていたけど残念だったと感じたチームは?

「明治大(往路23位、総合20位)ですね。体調不良者も出ずに臨めたのに、2区のブレーキで流れを失ってしまいました。山本豪監督は、なぜこうなったのかわからない、と頭を抱えていました。やはりそれも箱根駅伝の怖さです」

――あとは優勝候補の中央大......直前にチーム全体で体調不良者が出てしまいました。

「いや、もう。私自身も一番推していたチームだったので残念、というか何というか。今回の100回大会で優勝を目指したチームづくりを進め、数年かけて階段を上ってきたのに。故障、体調不良のリスクはどのチームもあることなので」

――総合7位の母校・早大はいかがですか。

「5区で予定していた伊藤大志(3年)、6区の北村光(4年)が体調不良で出走できなかったので、山のふたりの主力を欠きながら、よく頑張ったと思います。代わりに5区で区間6位だった1年生の工藤慎作は"山の名探偵"になったので(笑)、来年は伊藤もいますけど、今後3年間、山上りの計算が立ったことは収穫でした」

総合3位に入った城西大のエース5区・山本唯翔 photo by Kyodo News総合3位に入った城西大のエース5区・山本唯翔 photo by Kyodo News

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