渡辺康幸が振り返る箱根駅伝・第100回大会とこれから「総合優勝は10時間30分台、シード権争いは11時間を切る時代に」 (2ページ目)

  • 牧野 豊●取材・文 text by Makino Yutaka

【2区の一流選手は1時間5分台が基準に】

――太田選手の活躍もすばらしかったですが、青学大は2区の黒田選手が果たした役割も非常に大きかったです。

「駒大の鈴木選手が独走で逃げる予定だったところを、差を詰めて区間賞を獲ったわけですから大きかったと思います。順位としては駒大のトップ中継は変わりませんでしたが、その後の流れを決めた走りだったと思います」

――黒田選手は最初、集団を使ってペースを維持し、鈴木選手はずっと単独走のまま走りきるわけですが、情報として差を詰められていることは伝わっているわけですよね。

「耳に入っていますし、自分がこんなにいい走りをしているのに、なんで差を詰められるんだろうと思っていたはずです。そもそも駒大は1〜3区までほぼパーフェクトな走りをしたと言えます」

――今回はエース区間と言われる2区で1時間6分台を6人がマークするなど基準が上がった印象でしたが、この傾向は今後もさらに進んでいきそうです。

「まずはシューズの影響は大きいと思います。スピードに乗れば乗るほどシューズの効果はより発揮されていますし、そもそも大学生の根本的な走力が上がっている。花の2区を走る選手は、実業団の選手と互角に渡り合う走力を持っているレベルですので、1時間6分台で走ることはスタンダード、1時間5分台を走ってこそ一流選手という考え方になってくると思います」

――選手も監督も、近年は特に「先に行かせると逃げられてしまうんで、とにかく、先頭から離されないように」というコメントをよく耳にしますが、シューズの効果もあり、ちょっとでも逃がしたら後から追っかけるっていうのがなかなか現実的じゃない。

「そうですね。厚底シューズだと前半から突っ込んで後半少しくらい止まっても何とか押し切れてしまう部分があります。万全のコンディションを整えてスタートラインに立てば、時に想定を超える走りを目の当たりにすることもある。薄底シューズだと後半バテたら止まってしまいます」

――今年はやはり、3区が一番のポイントとなった区間でしょうか。

「印象に残っているのは3区なんですけど、意外に4区が鍵になったという見方もできます。駒大の山川選手と青学大の佐藤一世選手(4年)が走りましたが、佐藤選手は1カ月の間にインフルエンザと盲腸の両方にかかっていましたし、万全ではない状態でスタートラインに立っていました。それなのに最初の1000mで30秒くらい山川選手に差をつけたので、そこで勝負あった、という印象です」

――そういう状況は表情からわかるものなのですか。

「いや、表情からはわからないです。佐藤選手は15kmすぎ、いやそれよりもっと前から相当しんどそうな表情でしたので、苦しいことは苦しかったと思います。ただ、雨も降ってきて、コンディションも良くなくなったので、ものすごくタイムを落としてるかなと思ったら、苦しい顔をしながら全然落ちてなかったんで」

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