箱根駅伝17年連続出場の帝京大 トップクラスの選手はいなくても戦えている要因を監督に聞く (2ページ目)

  • 和田悟志●取材・文 text by Wada Satoshi

【充実の競技環境と優勝校までの距離感】

――今回の箱根駅伝では、総合3位に入った城西大の低酸素ルームでのトレーニングが度々ピックアップされていました。帝京大も施設面が充実しているのを耳にします。実際に、駅伝競走部が活用している施設にはどんなものがあるのでしょうか。

「まずは管理栄養士の食事ですね。長距離はたくさん食べればいいってわけではないから、なかなか難しいと思うんですけど、考えられた食事が朝昼晩(昼は希望すれば)と提供されます。

 また、クリニックにいつでも行けて、CTやMRI検査が受けられます。24時間、体調を崩した時のバックアップ体制があるのは安心材料です。

 もちろん低酸素室もありますし、故障者向けの高気圧酸素治療も受けられる。傾斜を付けたトレッドミルなどトレーニング施設も充実していますし、スポーツ医科学センターのサポートを受けられるのは大きいですね。

 あとは何でしょう......。ここの陸上競技場(五輪や世界選手権などで使用されているイタリアのモンド社製の全天候型トラック)が使えて、私の指導が受けられるということでしょうか(笑)」

――先ほど「優勝しないといけない」という言葉がありました。今回の箱根駅伝は青山学院大が大会新記録を打ち立てて優勝しました。駒澤大学も、箱根では敗れたとはいえ、年間を通して見ると強さが際立っていたように思います。この2チームをどのように見ているのでしょうか。

「両チームともスカウトが良いのは当然ありますが、青山学院の場合は、個人個人の意識が高いんだろうなと思います。想像でしかありませんが、練習でもいろんな工夫をしてやっているんじゃないのかな。

 駒澤の場合は、大八木さん(弘明、総監督)の指導が学生の枠を超えています。実業団以上の練習をしてきているのかな。箱根駅伝だけではもったいない。実際に、大八木さんは「世界、世界...」と言っていますが、それは大きいですよね。"世界をめざすんだったら、箱根ぐらい走れないとダメだよね"っていう考えになったら、本当に怖いチームになってくると思います。

 それにしても、今回の青山学院は掴みどころがなかった。今回のオーダーは想像できませんでした。誰がどこを走ってもいい。そんなチームでしたね」

――青山学院大が優勝することは、どの程度想像されていたのでしょうか。

「失礼ながら、全く思っていませんでした。だって、出雲、全日本と、あれだけ駒澤が強かったんですよ。それに、(山の)上り、下りもいるわけじゃないですか。駒澤が負ける理由が見つかりませんでした。オーダーを見て4区で逃げるんだろうなと思ったし、うちは全日本で駒澤に15分も負けていますから、繰り上げを覚悟したほどでした。

 結果的には、前回5区を走った山川拓馬選手(2年)は4区に回り、6区の伊藤蒼唯選手(2年)は走っていませんでした。そこが駒澤の敗因だったのかな。3区で青山学院に先行を許しましたが、駒澤の1区、2区、3区は失敗じゃないですよ。やっぱり強かった。それ以上に、想像を超える強さを青山学院が見せたということですよね」

――この2校に関しては、どの程度意識していたのでしょうか。

「こんなことを言ったらダメなんだろうけど、今回は全く見ていませんでした。全日本では、駒澤にはひとつも勝った区間がありませんし、青山学院には1区間だけでしたから。

 このふたつのチームはなかなか真似できないし、悔しいけど、同じことはできない。でも、個人では勝てた区間もあった。そこから少しずつ可能性が広がっていくのかなと思います」

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