箱根駅伝の特殊性と勝負勘 駒澤大・藤田敦史監督が語る反転攻勢「今度はうちが」 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi

【想定を超えていた青学大の往路新記録】

――出雲と全日本は圧倒的な勝ち方でしたが、そういう中でも危機感は感じていたのですか。

「競ったレースができていない点では、そうでしたね。ずっと逃げて走っているだけなので精神的にも楽です。それがやっぱり箱根の3区で逆転された時に、チームとして精神的に追い込まれてしまった。もしあれが(佐藤)圭汰でなければ、他の区間で抜かれたというのであれば、精神的なダメージはそこまでなかったかもしれませんが、"あの圭汰が抜かれた"という衝撃は大きかった。

 その時に頭をよぎったのは私の大学4年(1999年)の箱根で、4区を走って順天堂大の大橋真一を抜いてトップに立ち、往路優勝をした時のことでした。その時、総合優勝した順大の沢木啓祐先生が、『駒澤大の藤田の走りはすばらしかったから抜かれるのはしょうがない。だけど大橋はうちでは10番手の選手だから、駒澤で一番の選手に抜かれるのは当然。チームとしての精神的なダメージはない』とコメントしたのです。そのあたりがやっぱり、長く監督経験のある方の勘というか、抜かれるにしても誰が抜かれるかまで考えて配置を考えている。そういうことをいろいろひも解いていくと、いろんな面で"なるほどな"というところにたどり着くわけです」

――青学大の原晋監督が「佐藤圭汰と山川拓馬の2選手を押さえ込めば勝てる」と言っていたのは、経験からくる勘といった部分だったということでしょうか。

「青学大の原さんからしたらそのふたりを抑え込んだら、駒澤は精神的なダメージを負うし脆くなるんじゃないかと考えていた。だからやっぱり、そこは長年やってきた人の勝負勘なんだなと改めて勉強させられました。ただ適材適所に並べればそれでいいというのではなく、勝負事というのは相手があってのこと。だからシミュレーションしていくなかで、自分たちのどこが負けていて、どこは勝てるのか。どこに自分たちの武器を置いて、ダメージをどう最小限にしていくかということを考えていかなければいけません」

――ただ、青学大の往路新記録、5時間18分13秒は速すぎるタイムでした。

「レースの後半は雨になりましたけど、たぶん追い風だったと思いますし、今回は条件もよかったです。あとはシューズもやっぱり、今回に関してはすごく良かったんじゃないですか。ナイキにしろ、アディダスにしろ。我々の想定では5時間21分15秒と、青学大が持っている(前の)大会記録を1秒上回る設定にしていました。それも1区が1時間2分台とスローな展開になるという想定だったので、そこが1分速くなったから5時間20分15秒なんですね。往路新で走れば後続を1~2分は離せるだろうという目論みだったのが、5時間18分は、想定を超えていました」

――シューズの性能もよくなっているので、余計に読みにくくなっていますね。

「それは本当にありますね。でも世界がそうなっている以上は、そこに合わせてやるしかないです。こればっかりはみんな同じ条件なので、これからはそこも本当に考えていかなければいけないと思います」

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