箱根駅伝総括 青学大と駒澤大はどこで差がついたのか、城西大・東洋大快走の理由を識者3人が解説 (3ページ目)

【駒大は"守りの駅伝"をしようとしてしまった】

■折山淑美(スポーツライター)
 
(予想)              (結果)

1位 駒澤大           1位 青山学院大

2位 青山学院大         2位 駒澤大

3位 國學院大          3位 城西大

4位 中央大           4位 東洋大

5位 城西大           5位 國學院大

6位 創価大           6位 法政大

7位 早稲田大          7位 早稲田大

8位 順天堂大          8位 創価大

9位 大東文化大         9位 帝京大

10位 東洋大          10位 大東文化大

 波に乗った時の青学大の強さはさすが、と思える箱根駅伝だった。しかしその勢いは、駒大が出雲駅伝と全日本大学駅伝で完勝したからこそ生み出されたものだろう。

 あの強さを見せつけられたことで、世間では"駒澤一強"というイメージが作り上げられた。他校も「打倒・駒大」と口にしても、心の中では「あの強さには敵わない」という思いもあったはずだ。

 だが、青学大には初優勝以来の9年間で総合優勝6回を成し遂げ、他の年も2位、3位、4位と、ミスをしても上位に居続ける総合力の高さを誇る。だからこそ「箱根は違う」という気持ちを持てたのだろう。さらに、相手の強さを認めるからこそ、挑戦する意識を持てた。それを最も体現したのが、駒大の佐藤圭汰をかわして先頭に立った、3区の太田だった。

 それに対して駒大は、出雲と全日本がよかったからこそ、2年連続の大学駅伝3冠を"果たさなければいけないもの"として心の中に持ってしまったのだろう。さらに1区から3区まで、学生トップの篠原と鈴木、佐藤と並べて先手を取ろうとする、王道でありながらも戦力を考えれば"守りの駅伝"をしようとしてしまった。

 前回まで駒大を牽引した田澤廉(トヨタ自動車)は、「学生長距離の可能性を切り開く」という自覚もあり、体調が万全でなくても他の選手たちを鼓舞するような走りをしていた。一方で今回の主力3人にはそこまでの意識はなく、「3人で結果を出す」という思いだったのだろう。

 各選手が「自分がなんとかする」という気持を持っていたならば、1区の篠原も、青学大と國學院大が遅れた時にさらにダメージを与えるような積極的な走りをしていたはずだ。それは2区の鈴木、3区の佐藤も同じ。青学大は12月にインフルエンザが蔓延して体調不良者が出たというが、それもあったからこそ余計に、精神面でもピーキングをうまく箱根に合わせられたのかもしれない。

 中大は体調不良者が多数出て、往路の1区から下位に沈んだのは残念だった。3位になった城西大は、5区の山本唯翔の存在もあり、櫛部静二監督が本気で往路優勝を取りに行ったからこそ快走につながったのだろう。

 出雲は8位、全日本は14位と苦戦し、箱根はシード権獲得を目標にしていた東洋大が4位に食い込んだのは、「さすが」としかいいようがない。1区で遅れ始めた時は「前回と同じように苦戦か」と思えたが、そこから10位・順大に30秒差の15位と粘れたのが大きい。

 その後も、2区で大きく挽回するのではなく、2、3区で他校の力も利用して着実に走った。展開がバラけてくる4区にエースの松山和希を置き、上位を確実にした酒井俊幸監督の戦略がうまく機能したと言える。

 シード権争いは今回も最後まで熾烈だったが、青学大がこれまでの往路記録を3分以上更新する大会記録で走ったことで、復路は8位以下が一斉スタートになり、自分たちの位置を正確に確認できない難しいレースになった。復路の繰り上げスタートは仕方ないものだが、シード権争いも見所のひとつにするなら、10位までは時差スタートにして11位以下を一斉スタートにするなど、ルール変更も考えてもらいたいとも思った。

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