元東洋大・相澤晃が箱根駅伝に柏原竜二のいたころの母校と現状を比較「厳しさを削りどこで補うのか」 (2ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun

――今の低迷につながっていったということでしょうか。

「僕が1年生の時、めちゃくちゃ弱かったんですけど、箱根(第93回)は2位でした。でも、僕らは10位で、その時のチームよりも弱いのかよと思うと、情けなさもあり、悔しさもありました。選手のタイムだけ見ていると悪くないですけど、周囲の大学のレベルが上がっていくのに東洋大はついていけなかった。『この選手すごいよね』とか、『トラックすごく速いね』という選手が出てきていないし、今もいないのは大きな問題かなと思います」

――OBとしては、今の東洋を見ていると歯痒い感じですね。

「そうですね。今、選手は自分たちで考える余裕がないんじゃないかなと思います。東洋大はいろんな意味で厳しくて、それが強さでもあったんです。でも、時代の流れで厳しいだけじゃやっていけなくなった。厳しさを削り、それをどこで補うのかというと練習です。つまり、やらされる練習が増えるということ。他大学に勝つために練習量を増やすのは分からなくはないですけど、僕はまず個々が自分の競技についてもう少し考えられる時間を増やしてあげた方がいいかなと思います」

 東洋大は厳しい規律と縦関係があり、練習は質量ともハードと言われている。その厳しさが東洋大の強さを生んでいたとも言えるが、選手の気質の変化や自主性を重んじる時代の流れから東洋大の強さの根幹を揺るがす変化が起きているようだ。

――東洋大は総じて厳しく、今は過去よりもさらに練習が増え、それがチーム作りに影響しているということですか。

「いや、そもそも東洋大の練習って、量自体はそんなに多くないんですよ。それよりチームの雰囲気作りがすごく難しいんじゃないかなと思いますね。昔は生活面が非常に厳しかったので、自然とチームの雰囲気が締まるんです。でも、時代の変化とともに緩くしていくなかで、いい緊張状態で箱根を迎えるのが難しくなっているのかなと思います」

――箱根駅伝のエントリー発表会の時、酒井俊幸監督は今年のチームは競技面、生活面でうまくいかなかったと言っていました。相澤選手が指摘した部分と通じるところがあります。

「酒井さんが監督になった時、東洋大はある程度下地ができていて、強いチームを受け継いでやってこられたんです。でも、今それがなくなって弱くなったチームから再び強いチームにしていくところで、すごく難しさを感じていると思います。どんな監督でも長くやっていると波が出てきますし、ずっと強いままでいるのは難しい。長く指導している神大の大後(栄治)さんも優勝した時もあれば予選会に回ったりもしていますからね。それでも極端に悪くなることはなかったですが、前回の箱根で最下位付近を走っているのを見た時は、これは本当にヤバいなって思いました。僕が走っていた時はそんな順位で走ったことはなかったですから」

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