【箱根駅伝】最強・駒澤大学に挑むライバルたちを渡辺康幸が考察 (2ページ目)

  • 牧野 豊●取材・文 text by Makino Yutaka

【ハマれば魅力の中大の爆発力】

――では、次に全日本2位、箱根では2年ぶり7回目の優勝を狙う青学大についてはいかがでしょうか。

「スピードのあるレベルの高い選手は多いのですが、ゲームチェンジャーと呼べる選手が少ない印象です。2区候補もパッと思い浮かぶ選手がいないので、原晋監督としては区間配置に少し悩む部分はあるのではないでしょうか。2年生の黒田朝日選手が急成長してきているので、彼を2区か5区のどちらで走らせるのか。そこが戦略としてひとつのカギになると思います。ほかに5区で実績のある若林宏樹(3年/2022年区間3位)、過去2年の箱根で好走した太田蒼生(3年/2022年3区区間3位、2023年4区区間2位)の両選手もいわゆるゲームチェンジャー候補ですが、大黒柱と呼べる選手が誰になるのか」

――選手層は高いレベルで厚いが、そこからさらに突き抜ける存在がほしい。

10区間トータルで考えれば、復路で巻き返す力は十分に備えています。ただ、往路で乗り遅れてしまう危険性もあるので、そこをどう対処していくか、という意味です」

――前回大会の近藤幸太郎(現・SGホールディングス)選手は別にして、原監督は箱根で連覇している頃もそうでしたが、エース区間の2区で勝負! という区間配置を必ずしもしてきた訳ではありません。

「昔からそうですよね。2区を特別視しているわけではありません。今回でいえばオーソドックスにいくなら2区に黒田選手、5区に若林選手、ゲームチェンジャーになりえる太田選手を3区か4区に置く。あと1区候補の佐藤一世(4年)選手もいますので、往路でうまく力を発揮できれば、復路はアドバンテージがあるので、駒大に挑めるのかと思います」

――前回大会2位の中央大についてはいかがですか。前回大会2区区間賞の吉居大和(4年)選手が最終学年となり、チーム全体でも総合優勝を狙える戦力が整っています。

「打倒駒大という意味では、戦力がハマったら一番可能性があるのは中大だと思います。吉居兄弟(大和、駿恭/2年)、中野翔太(4年)というスピードランナーを3人並べたら、すごい力になると思います。ただ、トラックで5000m1320秒台の自己ベストを持っている選手が多いことは間違いないのですが、ロードレースの1区間20km近い箱根駅伝にしっかりシフトできるかどうかがカギとなります。私の現役時代は、駅伝シーズンに(トラック用の)スパイクを履くことがなかったのでわかりませんが、近年は秋以降にもトラックレースに出る選手が増え、中大の主力もそうです。その辺りの調整をどうしていくのか。トラックの延長で駅伝を走れるわけではありませんので、その点が気になります」

――実際、11月の全日本では1区からその3人を並べましたが、うまくいきませんでした。吉居大和選手は直前に海外でのトラックレースに出場した影響もあったかもしれませんが、3区で区間11位と精彩を欠きました。

「そういう崩れるリスクはもちろんあります。とはいえ、おそらく1区・駿恭、2区・大和への兄弟襷リレーが見られる可能性は高いです。ふたりとも、持っている潜在能力が高い選手ですし、中野選手含めて3人が力を発揮できれば4区に湯浅仁(4年)、5区には過去2年の経験がある阿部陽樹(3年)と、頼れる選手がいるので、やはり個々のパンチ力が強力な布陣です」

――國學院大はいかがでしょうか。全日本7区ではエースの平林清澄(3年)選手が区間賞を獲得するなど、成長を続けています。

「学生駅伝のトップ3、悪くてもトップ5に安定的に入るチーム力を十分に備えてきました。取材に行った知り合いの報道陣の方たちも一様に、すごくいいチームになっている、と言う人も多いです」

――頂点を狙うためにはもう一段階、チームとしてのブレイクスルーが期待されます。

「2区候補の平林選手のみならず、山本歩夢(3年)、青木瑠郁、上原琉翔(共に2年)、5区候補の伊地知賢造(4年)ら個々の選手も強さを発揮しているので、崩れることはない。だからこそ、そこから頂点に対してどう挑んでいくか。泥臭い練習もやっているので復路でも強いと思いますが、どこかで爆発力がほしい。その部分をどう醸成していくかだと思います」

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