箱根駅伝の優勝候補・駒澤大の激しいメンバー争い 主力選手たちは上尾ハーフの走りをどう自己分析したのか (3ページ目)

  • 佐藤俊●文・撮影 text & photo by Sato Shun

【自己ベスト更新も、ここからが大事】

 花尾をとともに期待されていたのが、白鳥哲汰(4年)だった。

「自分はハーフに苦手意識があったり、持ちタイムが63分だったんですけど、今回は最初から積極的に行こうと決めていました」

 1キロ2分55秒のペースで押していく中、このままいけば自己ベストは達成できると思っていた。だが、途中から気温が上がり、前半に速く入った影響で後半、キツくなった。

「早稲田の山口(智規・2年)君が残り5キロで前に出たんですけど、そのスピードでいくと打ち上がってしまうと思ったので、自分のペースに切り替えました。残り1枚のニューヨーク行きのチケットを松永(伶・法政大4年)君たちと競うことになり、粘り強く、我慢していこうと思ったんですが、後半にガクッと落ちてしまって......。タイムは61分台、順位は2位内を狙っていたので、今回は最低限の結果という感じです」

 62分14秒の自己ベストで、7位に入賞したが、満点の結果とはいかず、悔しさを噛みしめていた。白鳥は、箱根で奇跡の逆転優勝を果たした1年時、1区(15位)を走り、2年時は7区(10位)を駆けた。3年時は駅伝に絡めず、今シーズンは出雲、全日本でメンバー入りを果たせなかった。チームは2つの駅伝で優勝し、うれしさはあったが、自分が走れないことで素直に喜べない気持ちもあった。

「やっぱり走れないで見ているだけはキツイ。箱根が最後の大学駅伝になるので、何がなんでも走りたい。白鳥だったらいけると思わせないと箱根では使ってくれないので、これから本番まで気を抜かずにやっていきます」

 白鳥の結果を受けた藤田監督は、「まだまだ」という表情だった。

「今季は勝ち切るのがテーマなので、2位の松永君と最後まで争って勝ち切れると良かったんですが、今回は強さを見せることができなかった。白鳥は昨年よりはいいですが、ここからが大事というのは、選手全員に伝えている。今後の合宿で調子を上げてほしいですね」

 白鳥は、どこまで調子を上げられるか。

 今回の上尾は、庭瀬の走りや小山翔也(1年)が初ハーフで62分59秒と結果を残し、出遅れた選手の現状を把握するなど収穫があったが、67分08で203位に終わった赤津勇進(4年)や唐澤は厳しい結果に終わり、昨年、日本人1位になって箱根出走を決めた円健介のような選手は出て来なかった。
 
「このままじゃいけない」

レース後、藤田監督はそう語ったが、2冠を獲り、なお厳しさを求めるのは、絶対はない箱根に勝つため、油断を断ち、想定できるリスクを最小限にしたいからだろう。 駒澤大は隙のないマネジメントで、このまま箱根まで突っ走りそうだ。

プロフィール

  • 佐藤 俊

    佐藤 俊 (さとう・しゅん)

    1963年北海道生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、出版社を経て1993年にフリーランスに転向。現在は陸上(駅伝)、サッカー、卓球などさまざまなスポーツや、伝統芸能など幅広い分野を取材し、雑誌、WEB、新聞などに寄稿している。「宮本恒靖 学ぶ人」(文藝春秋)、「箱根0区を駆ける者たち」(幻冬舎)、「箱根奪取」(集英社)など著書多数。

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