全日本大学駅伝で大活躍したルーキーたち 前田和摩ら箱根駅伝でスーパーエースと呼ばれるようになるのは誰だ? (3ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun

【駒澤大・赤津にくらいついた創価大ルーキー織橋】

 織橋巧(創価大1年)も1区で素晴らしい走りを見せた。
 
「スタート前は、思ったよりも緊張しなくて、自分よりもレベルが高い選手と一緒に並んでスタートできることにワクワクしてすごく楽しみでした」

 スタート後は集団の中で息をひそめ、ラストで間瀬田純平(早大・2年)、赤津勇進(駒澤大・4年)のスパートバトルが勃発したが、織橋も必死になって粘った。
 
「自分が希望している区間だったので、それが叶ったんですけど、その分、責任があると思いました。1区でチームに流れを持ってきたいと思ったので、耐えて、耐えてのレースだったんですけど、ラストはよく粘れたと思います」

 ラストでの競り合いは堂々と勝負し、トップの駒澤大に6秒差の区間4位。創価大にとっては上々のスタートになった。
 
「区間4位は、自分が想定していたよりも前との差を短くできましたし、順位的にも納得できるものでした。この経験を箱根駅伝に繋げられたらと思っています」

 織橋の視線はすでに箱根に向けられている。長い距離は苦手ではないが、「未知数」ということもあり慎重だ。
 
「箱根の1区は、全日本の倍以上の距離になるので、今回以上の粘りが必要になりますし、ラストスパートで離されてしまったんですけど、そういうところに喰らいついていくスタミナも重要になってきます。そこは、今後、距離を踏んで対応していきたいと思います」

 今回は1区だったが、実は中京高2年の時に出走した都大路でも1区(29位)を走った。箱根駅伝では、どの区間が希望なのだろうか。

「単独よりも集団走が好きですし、その中で持ち味である粘り、スパートをしっかり出していけたらと考えているので、1区が希望です」

 きっぱりとそう語る表情には、自信と負けず嫌いな気持ちの強さが垣間見える。全日本の1区には後村、他区でも工藤慎作(早大)、本間颯(中大)らルーキーが出走していたが、同学年の選手からは刺激を受けているようだ。

「同学年の選手は、すごく意識します。箱根予選会での前田(和摩)選手はすごく良かったですし、世代のトップの吉岡(大翔/順大)選手、さらに今日は後村選手が一緒の区間でしたので意識しましたし、負けたくないという気持ちで走りました。世代トップのような選手に少しでも近づけたらいいかなと思っています」

 今回の全日本大学駅伝では、彼ら以外にもルーキーが出走している。
 
 出雲駅伝でデビューを果たした順大の吉岡(3区14位)を始め、創価大では織橋と同期の小池莉希(4区16位)、早大は工藤(4区13位)、東洋大の薄根大河(5区10位)らが苦戦する中、中大の本間颯(5区5位)のように快走する選手もいた。
 
 今回、補員登録されているメンバーの中には、1年生の名前が多くあり、箱根駅伝ではそこに記されていた選手がどのくらい出てくるのか。また、どんな走りを見せてくれるのか。
 
 箱根駅伝でチームを救うのは、意外とルーキーだったりするかもしれない。

プロフィール

  • 佐藤 俊

    佐藤 俊 (さとう・しゅん)

    1963年北海道生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、出版社を経て1993年にフリーランスに転向。現在は陸上(駅伝)、サッカー、卓球などさまざまなスポーツや、伝統芸能など幅広い分野を取材し、雑誌、WEB、新聞などに寄稿している。「宮本恒靖 学ぶ人」(文藝春秋)、「箱根0区を駆ける者たち」(幻冬舎)、「箱根奪取」(集英社)など著書多数。

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