髙橋萌木子が「私の陸上を返してよ」と号泣したロンドン五輪 リレーメンバーから本番直前に外され帰国後は「バトンが握れず走れなくなった」 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi

 結局、リオ五輪には間に合わなかったが、同い年の福島千里や木村文子が現役でいたこともあり、競技を辞める選択肢は選べなかった。

「まだアキレス腱が痛い時に、木村文子ちゃんに『サッカーをやってみたい』と話したら、『モモちゃん、それはいいけどアキレス腱が痛いからってサッカーに行くのは筋違いよ』と言われて。『サッカーへ行っても壁は同じようにくるから、その前に個(の走り)を極めたほうがいい。モモちゃんにしかできないことがあるから、逆にアキレス腱の痛みと、うまくつき合いながら自分を高めていったら、その先でサッカーにつながるかもしれないし、そのほうが自分のためになるよ』とも言われて、逃げそうになる度に文子ちゃんに相談すると軌道修正をしてくれたので『もうちょっと陸上をやってもいいかな』と思えていました」

 そんななかで縁があり、2018年からは初動負荷トレーニングで知られている鳥取のワールドウイングに行き、そこのスタッフを務めながら小山裕史氏の指導を受けるようになった。

「リオに間に合わなくて自分との約束は果たせなかったけど、その延長線上の景色も自分で見てみたかったし、アキレス腱の痛みにも波が出始めて『このくらいの痛みだったら走れる』とか、自分でメンテナンスして緩和できることもわかってきて。アキレス腱が痛くなくなったら練習を積めるなというのがあったから、『そうなればチャンスが巡ってくるかもしれない』と、微かな希望を自分のなかに抱いてやっていました」

2019年9月の実業団選手権では3位に入り、復活を感じさせた photo by Naoki Nishimura/AFLO SPORT2019年9月の実業団選手権では3位に入り、復活を感じさせた photo by Naoki Nishimura/AFLO SPORT ワールドウイングでのトレーニングでアキレス腱の痛みが消えた2019年5月の鳥取選手権では、7年ぶりの11秒台となる11秒84を出した。さらに8月の中国五県対抗選手権を11秒89で制し、翌20年10月開催の日本選手権出場権を獲得。9月の全日本実業団でも3位になり、久しぶりに全国大会の表彰台にも上がった。

「7年ぶりの日本選手権だから、めちゃくちゃうれしかったです。でも私のプライドとしては、出るだけじゃなくて、勝負をしにいきたかったんですよね。決勝に残って勝負をするということを意識しすぎた部分もあって、結果日本選手権には出場できずに終わりました」

 結局、2020年9月に行なわれた鳥取県の東部土曜記録会が、髙橋の現役ラストレースになった。

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