MGC男子の上位ふたりは誰か? 鈴木健吾、大迫傑、山下一貴ら注目選手を脅かす存在も多数 (3ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by 森田直樹/アフロスポーツ、西村尚己/アフロスポーツ、長田洋平/アフロスポーツ

【学生マラソン記録保持者も出走】

 東京五輪で6位入賞を果たした後に引退し、昨年2月に現役復帰した大迫傑(ナイキ)も、要注目の有力選手であることに変わりはない。

 今年3月の東京マラソンでは、2時間613秒で総合9位に終わったが、チャレンジ期間と称した時期でのマラソンに手応えを感じていた。大会前はケニアで合宿をこなし、東京マラソン後はアメリカに滞在。日本の喧騒から離れた環境で、もくもくと練習を積み重ねてきた。7月にはマラソン練習の一環としてホクレンの網走大会の10000mに出走し、90分のインターバルで2本走り、思いどおりの練習ができていた。前回のMGCでは服部に競り負け、半年後に東京マラソン(2時間529秒・当時日本記録)で日本人トップとなり、東京五輪の切符を手にした。過去9レース中、日本人トップが5回と圧倒的な勝負強さを持ち、前回のMGCの経験もある。2大会連続の五輪出場を実現できる可能性は十分にある。

 このほかも気になる選手がいる。

 吉田祐也(GMO)は、青学大時代にマラソン初挑戦となる別府大分毎日マラソンで2時間830秒を出して、日本人トップの3位入賞。同年12月福岡国際マラソンでは2時間75秒の好記録でマラソン初優勝を飾った。「練習の虫」と言われるほどよく走り、大迫の合宿にも参加して、彼の薫陶を受けながら走力を磨いてきた。大学4年時、箱根駅伝で初出走ながら4区で区間賞を獲得すると、その後の初マラソンで結果を出すなど、勝負強さを持つ選手なので初のMGCでの走りにも期待が膨らむ。

 細谷恭平(黒崎播磨)も楽しみな選手のひとりだ。中央学院大時代、箱根駅伝で34年は5区でともに3位、独学で上りの技術を身に付けたように、強みは高い向上心と坂で得た粘り強さだ。「練習という土台があれば、あとは気持ちだけ乗せていけば最後、頑張れるし、大きく外すことはない」と語るとおり、21 年のびわ湖毎日マラソンでは初マラソンで日本人トップの2時間635秒を出し、同年12月の福岡国際マラソンでは2位と結果を出した。今年の東京マラソンは14位に終わったが、波がない強さをMGCで見せられるか。

 さらに、2時間626秒のタイムを持つ土方英和(旭化成)は、差し込みさえ起きなければトップ争いができる選手であり、2月に学生ながら2時間747秒で学生男子マラソン記録保持者となった横田俊吾(JR東日本)、百戦錬磨の川内優輝(あいおいニッセイ同和損保)、今井正人(トヨタ自動車九州)、岡本直己(中国電力)のベテラン勢と、まさに多士済々。

 セオリーどおりにはいかないレースになる可能性が大きいだけに、最後は「パリに行きたい」という思いがどれだけ強いか。メンタルが40%と言われるマラソンでは、その気持ちの強い選手が国立競技場で大きな喝采を浴びることになるだろう。

プロフィール

  • 佐藤 俊

    佐藤 俊 (さとう・しゅん)

    1963年北海道生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、出版社を経て1993年にフリーランスに転向。現在は陸上(駅伝)、サッカー、卓球などさまざまなスポーツや、伝統芸能など幅広い分野を取材し、雑誌、WEB、新聞などに寄稿している。「宮本恒靖 学ぶ人」(文藝春秋)、「箱根0区を駆ける者たち」(幻冬舎)、「箱根奪取」(集英社)など著書多数。

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