MGCは残暑の厳しさが影響? 神野大地が世界陸上を見て再認識した暑熱対策の重要性 (2ページ目)

  • 佐藤俊●文・写真 text & photo by Sato Shun

【世界大会での日本人のメダルもある】

 練習が順調に進行していく中、8月はブダペストで世界陸上が開催された。マラソンには山下一貴(三菱重工)、其田健也(JR東日本)、西山和弥(トヨタ)の3名が出走し、神野も注視していたという。レースは、32℃という厳しい暑さの中、優勝候補のエチオピア勢やケニア勢が脱落していくという苛酷な展開になった。

「山下選手が40キロ地点で、メダル圏内まで20秒のところまで頑張っていましたけど、改めてマラソンは最後まで油断しちゃいけない、怖いなと思いました。エチオピアとかケニアの選手はダメだと思ったら急に失速したり、やめたりするんですけど、今回もそうだった。そこで諦めなければ順位が上がっていくのを山下選手は感じていたと思うんです。実際に上がっていって、もう落ちることはない。ここからさらに上がっていくだけだと思った矢先、足にトラブルが起きた。ケニアやエチオピアの選手と同じように脱水症状が出たり、足がつったりするリスクが日本人にもあるんだなと思いました」

 山下は一時、5位まで順位を上げたがあと2キロというところで両足がつり、最終的には12位に終わった。其田は35位。42位の西山はレース後に車椅子で運ばれるほど苛酷なマラソンになった。レース後、山下のインタビューを見て、神野はその表情に大きな自信を垣間見ることができたという。

「山下選手のインタビューの受け答えからの印象でしかないんですけど、今回のレースで自分の力でメダルを狙えるところに来ているなっていうのは分かったと思うんです。結果は12位ですけど、もっとやれるという感触、手応えは絶対にあったと思うし、普通に走れば入賞もできたと思ったはずです。それを知ることができたのはすごく大きかったんじゃないかな。僕らとは異なり、ひとつの上の領域にいったなというのは感じました」

 山下の健闘はあったが、2013年モスクワ大会で5位の中本健太郎以来の入賞、05年ヘルシンキ大会での尾方剛の銅メダル以来の獲得には至らなかった。世界との距離については、どう見えたのだろうか。

「これは、僕自身の感覚ですけど、五輪や世陸などの世界大会に関しては、日本人選手はメダルもあると思っています。例えば、ベルリンマラソンで『よーいドン』になると結構、差が出てきてしまうと思うんですけど、世界大会は調整がすごく難しい。ケニアやエチオピアは3人が代表として出てくるけど、絶好調の3人が出てくるわけではないし、レース展開によっては途中で落ちたり、やめたりする選手もいる。日本もその可能性がありますけど、自分の調子をうまく合わせることができればメダルの可能性は十分にあると思いました」

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