東京五輪後は超弱気だった泉谷駿介の成長過程 世界標準の走りでパリ五輪メダルを狙う (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Nakamura Hiroyuki

【パリ五輪までの1年で積み上げるべきこと】

 海外の試合を転戦し、いろいろな条件や調子でレースをしたことで、「その時々の状況に対応できる引き出しの数が増えた」と話す泉谷。今回実感したのは、2日間で3本のレースをしっかり走りきれる体力や筋肉を作らなくてはいけないということだった。

「メダルも近いようで遠くて。トップ選手は本番に強いなとあらためて感じました。1年後のパリ五輪もこのまま自分の力を出しきれば、もしかしたらメダルもあるんじゃないかなとも思っているけど、それをあまり意識しないでしっかりアベレージを上げていくことが大事だと思います。欲を言えば12秒台も欲しいけど、そこは来年......。ホロウェイ選手のように予選、準決、決勝としっかりアベレージタイムを上げていくような選手になりたいと思います。そのために、まずはしっかり体作りをして練習を積んでいくだけだと思います」

 両ふくらはぎが攣った状態ながらも、緊張する世界陸上の決勝を13秒19で走れたのは、泉谷の底力を証明するものだった。準決勝後、「完璧ではなかった」とさらなる修正を口にしたように、本人も決勝で13秒0台は出せると意識していた。

 今大会、ホロウェイに勝つのは難しかったが、銀メダルは可能性があった。事実、2位は13秒07で、泉谷が本来の力を発揮すれば届いた記録だ。山崎コーチも「銀あたりは見えていた」と評価する。

 今回の世界陸上では、これまで経験したことのない短時間の間に準決勝、決勝を走った。だからこそ、泉谷は今の自分に何が足りないかが明確になった。この経験がパリ五輪のメダルにつながることは間違いない。目標にする12秒台を出してパリ五輪に臨めれば、トップ選手に脅威を与える存在になり、金メダルの可能性も広がってくる。

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